自分が着ているもののスゴさを人に言って聞かせるなんてのは野暮だけど、お気に入りの服にストーリーがあるなら知りたくなるのが服好きの常。〈バンブーシュート〉と〈マウンテンリサーチ〉がともに作るアイテムには、そんなエピソードが山ほどあります。雑談の延長で脱線だらけのアイデアを出し合った小林節正さんと甲斐一彦、そして、それを形にしたパタンナーの矢實朋さん。時にマジメに、時にフザケて、3者が会して語る四方山話。今季のコラボも、個性豊かなヤツらができました。
※webメディア「フイナム」では、今回のバンブーシュートとマウンテンリサーチのコラボレーションにまつわるストーリーを鼎談形式で公開中。本記事と2本立てでお楽しみください。アクセスはこちらから!
staff
Photo_Yuma Yoshitsugu
Text_Rui Konno
Edit_Ado Ishino
小林節正
セット代表/マウンテンリサーチ 代表
1961年生まれ。シューデザイナーとしての活動を経て1994年にアパレルブランド〈ジェネラルリサーチ〉を立ち上げる。現在はその名を改め、〈マウンテンリサーチ〉他、用途に合わせたレーベル名を立てて、専門性の高いプロダクトやスタイルを探求している。長年のフィールドワークや私設キャンプ場での経験を生かして昨年、山梨県道志村にオープンしたキャンプ場「水源の森キャンプ·ランド」をプロデュース。
甲斐一彦
バンブーシュート ディレクター
1973年生まれ。10代で古着の世界にどっぷりハマり、’95年に今はなきヴィンテージショップの名店、「メトロ・ゴールド」のスタッフに。その後店長などを務めたのちに退社し、’98年に「バンブーシュート」をオープンした。当初はセレクトショップとして国内外のアウトドアブランドをピックアップしてスタイルの提案を行っていたが、現在はそれに加えて同名の自社ブランドも展開している。
矢實 朋
パターンメイカー/スタビライザージーンズ デザイナー
1978年生まれ。文化服装学院でメンズウェアのパターンメイキングを学び、独立後は国内外の名だたるコレクションブランドのオファーを受け、パターンを手掛けている。在学中には古着屋にも籍を置いていたヴィンテージ通で、服をよく知り掘り下げているデザイナーたちからの信頼はことさら厚い。2007年にはデニムブランド、〈スタビライザージーンズ〉を設立し、自らデザインも行っている。
TREK VEST -60/40 NYLON
トレックベスト 60/40 ナイロン
VIEW PRODUCT 〈TREK VEST-60/40 NYLON〉
甲斐一彦(以下甲斐):これはイギリス軍のアーカイブが元ネタ。いつだったか「ハンティングベストじゃなく、軍モノのベストで何か面白いやつないですかね?」って小林さんに聞いたことがあって、そのときに見せてもらっていたものが忘れられず、今回あらためて企画できたモデルです。
小林:トレックウェアとして再構築したものなので、コレ着て背中にはバックパックを背負っているというイメージ。バックパックの中よりも出す頻度が高いものだけを前のポケットたちに入れておくっていう想定だね。
―ちょっとしたトレックだったらカバン要らずの容量ですね。
小林:ウェアラブルなサイドバッグみたいなものだよね。別に無理くりデイバックを持つ必要もないはずだし、硬直化してものを考えないようにするのが大事だよね。アパラチアン・トレイル3500kmを延々とひとりで歩き通した“エマおばあちゃん”って人がいるんだけど、歩き始めたのは60歳ぐらいなのかな…。足元は昔の〈ケッズ〉のスニーカーを履いて、服装だってふだん通り、バッグだってダッフルバッグを担いでるだけだったっていう。そういうヒトこそ僕らのヒーローなんだよね。
―今回のベストと元ネタとを見比べたときに一番違うのはやっぱり重さですか?
小林:あとは分量感。これ(オリジナル)はおもしろいけど、とてもじゃないが普通に着てられるようなシルエットではないので。こういうものって普通2〜3回パターンをやり直さないと中々正解のバランスに落とし込めないんだけど、矢實は一回で決めてきたからスゲぇなと思ったんだよね。
矢實:打ち合わせでは、これに近い絵型のメモを小林さんからいただいた上で話を聞いていました。素材はロクヨンクロスを使おう、ということから、なんとなくフィッシングベスト的なシルエットに持っていけば良いのかなと勝手に思っていました。インナーのポケットに関しては甲斐さんたちが生活の中で使いやすいディテールを、という話を受けて必要な要素を取り込んだつもりです。
―リプロダクト的な考え方で古着を掘っている人とはまた視点が違いますよね。
矢實:あのベストをそのまんまやれって言われたら相当嫌ですね(笑)。フロントポケットの重なり感をどういう風にシンプルにするかは結構考えました。
小林:そこなんだよね。考える道順はみんな同じなんだろうけど、設計者によって結果的に全然違うものになる。
―元ネタがある中でこれだけつくり手の色が出るのがおもしろいですね。
小林:服のパターンを依頼する、イコール設計の人を誰にするのかは服をつくるにあたって本当に大問題だから。甲斐がパタンナーとして矢實を連れてきてくれたのがひとつ大きなポイントだったと思う。矢實だと伝えるのに無駄な努力が要らないないもの。
甲斐:本当に人に恵まれていると思います。矢實くんとはずっと一緒にやりたいと思ってたから。小林さんにこのベストのオリジナルを見せてもらって以来、あまりのカッコ良さにずっと感動してたんですけど、でも実際につくったらどうなるのかまったく予想が全然つかなかった。でも予想を越えちゃった(笑)。やると決まったら、あとは小林さんと矢實くんの阿吽の呼吸みたいなのが始まっちゃった。僕は「あら!」って(笑)。
矢實:これ(フロントのストラップ)とかもその流れで、後から付けましたもんね。小林さんからのコメントをもらって、「ここはこうだから」って言われて、「あぁ、アレですね」みたいな感じで。
甲斐:大枠をポンと投げたら、後はサーっと進んで行って。そしたらものすごく良いモノができてビックリしました。
小林:設計者とノリ・反りが合わないと困ったりするんだよ(苦笑)。時間をかけて打ち合わせしたのになってなっちゃう。俺は靴屋出身だから服づくりのことはあんまりわかってるわけじゃないんだけど、服ってヤツは縫製と設計をちゃんとしていないと、どんな良い企画でも服としてのパフォーマンスは悪くなる。どんなに良い色合わせでも、着たときのパターンが悪かったら着られたもんじゃないもんね。
―ブレストしている中で見送ったアイデアやボツになった企画はあるんですか?
小林:足が3本ついたベイカーパンツ!
甲斐:(爆笑)。コロナ禍のせいでメンブレン生地(水滴に侵入を防ぎながら水蒸気は外に排出してくれるハイテク素材)が手配できず、ドロップしたものとかはありました。あとは「ph」の刺しゅうシリーズのアイデアが膨らみすぎて収拾がつかなくなったこともあったかな。
―そのアイデアは今後に繰り越す感じですか?
小林:それはこの人(甲斐さん)次第だね(笑)。
甲斐:(笑)。やりたいなと思っていても小林さんに言えずに帰ってきたこともいっぱいあります。タイミングが合わなかったな…と思うこともあるし。このベストがまさにそれで。小林さんから元ネタを初めて見せてもらった時から打ち合わせ2回分ぐらいは言い出せずにスキップしてます。でも小林さんが覚えてくれていて「あれやろうよ」と言ってくれたんです。「あ、ハイ」とか言いながら内心では「やっと来たか!」って思ってました(笑)。
小林:矢實:(笑)。
CHAMBRAY TREK SHIRTS
シャンブレー トレックシャツ
VIEW PRODUCT 〈CHAMBRAY TREK SHIRT〉
―これ、両脇が完全に開くんですね?
小林:うん、開くと完全に平べったくなる。
甲斐:一番好きなU.S.ネイビーのシャンブレーシャツをバンブーシュートのスタンダードラインで矢實くんにつくってもらったんですが、それを元に制作してます。脇のベンチレーションの元ネタは〈シナジーワークス〉っていう、昔あった変態的なアウトドアブランドです。
―こんなにトガったベンチレーションがあったんですか?
小林:いや、さすがにここまでは開かない。脇腹までだったね。トップスの裾をパンツにタックインするのが当たり前だった時代につくられたものだし。
甲斐:「全部開けちゃおう」って小林さんが言ったんですよね(笑)。
小林:うん。シャツ屋さん嫌だったろうなぁ…「何がしたいんですか?」って思っちゃうよね(笑)。
甲斐:小林さんがそう言ったときに俺はすぐ返事ができなかったです(笑)。でも矢實くんがいるから大丈夫かなとは思ってたんですけど、これはすごい。本当によくできたと思います。開いた状態で洗濯したら、どこをどう留めるんだっけな?ってなりましたけど。
―この数だとボタンを掛け違えると大変そうですよね。
小林:まぁ我々自体がボタンの掛け違えのような人生だからね。
甲斐:矢實:(笑)。
小林:このシャツは一番甲斐っぽいと思う。甲斐がトレック歩いてる時の感じに一番近いだろうね。
―この構造にするにあたって、矢實さんはパタンナーとして苦労したことはありますか?
矢實:脇も、袖の下の縫い目も普通だったら前と後ろを重ねないで、くっつけてゼロになるようにするんです。それを重ねる仕様になってるのがこのシャツなんですけど、ただ単純に重ねれば良いだけじゃ済まないので、(最適な)分量を出すのが大変でしたね。後ろ側の分量を増やしていかなきゃいけないんですけど、そのときに距離のつじつまが合わなかったりするので。
―重なる部分の内側はガーゼ生地なんですね。
矢實:はい。このガーゼの生地もちゃんと追求している人ってあんまりいない気がするんですけど、生産の人と話しながら中古っぼいものを選んで…っていうのは独断でやらせてもらいました。
小林:このちょっと織りが甘い感じのね。
矢實:はい。当時っぽさを求めると結局こっちになるんです。
小林:その頃だと、ただの芯材を使ってたんだろうね?
矢實:フラシ芯ですよね。
小林:そうそう。こういう話も設計する人が違ったり古着が趣味じゃない人だとゼロから話さないといけないし、元ネタに使われてる素材は現代にはもう無いものばっかりだから、今あるものから近似値で探してもらわなきゃいけない。服づくりのグルーヴが出る、出ないっていうのは設計者次第なんだよ。
矢實:「生産側の人と一緒になってクオリティを上げることも手伝って欲しい」って依頼を元々いただいていたので、そういう意味でも古着に寄せる作業は力を入れてやりました。
小林:パターンって言い方にしちゃうと分かりづらいけど、「設計者である」と定義すると、すべての辻褄を合わせるまではこの人(矢實)の仕事になるじゃない?結局、企画でもなんでも最終設計者がすべてを完璧に把握してないと、この完成形には到達しないから。安心して預けられる人だと、何となくの感じで球を投げられる。投げる感じこそコミニュケーションだから。こちらの考えを受け取ってもらえてるのがわかる感じだったり、サンプルが上がってきたときの精度の高さとかでグルーヴが生まれるわけ。それが途切れてしまうと作り直す作業が永遠に続くことになるんだけど。グルーヴが生まれてる安心感が矢實にはあるよね。
―在りものボディの無地 TEE に〈マウンテンリサーチ〉と〈バンブーシュート〉のロゴだけプリントすれば「コラボです」と言えてしまう時代に、こういうグルーヴが宿った服に触れられるのはすごく有意義だなと思います。
甲斐:そのTシャツ、それはそれで売れそうだね。
矢實:(笑)。
小林:そりゃ売れるさ(笑)。だって今のメインストリームだもん。
PULL OVER TREK B.D. SHIRTS
プルオーバートレック ボタンダウンシャツ
―ベンチレーションの構造は共通していますけど、これはオックスフォード生地ですか?
VIEW PRODUCT〈PULLOVER TREK B.D. SHIRT〉
小林:そう。今回はプルオーバー。
甲斐:2013年に(初めてのコラボ)シャツをやらせてもらったとき、実はプルオーバーシャツがつくりたかったんですけど、いきなりプルオーバーをやる勇気は無いな…って。
小林:俺は基本プルオーバーしか着ないからさ。言ってくれりゃもちろん前開きのシャツも作るんだけど。ボタンダウンはその昔の〈ヴァン〉の頃からプルオーバーを着てた人に断トツでカッコいい人が多かったから。洋服好き…ホントの好き者じゃないと買わないのがプルオーバーっていうセオリーが自分の中では何となくある。
―甲斐さん、念願のプルオーバー仕様が形になってどうですか?
甲斐:本当に最高ですよ。着方も沢山あるし、ポケットもあるし。
小林:しかも縦に長くしてあるポケットは老眼鏡が入るオッサン用だからね!大きさはいつもしてるサングラスに合わせたってのもあるね。実はiPhoneが入る大きさだったのは後日談? 結果論?(笑)。
―それにしてもこの厚みのオックスフォード生地は他でなかなか見ないですよね。
小林:元ネタは「ダンリバー」社が生地を作ってた頃の〈ブルックス・ブラザーズ〉のシャツだね。ダンリバー社がもう無いから、それに近いやつを自分たちで作った。
甲斐:やっぱりこの感じが一番B.D.だなと。で、やっぱり白だろと。
小林:ヨークが狭いから縫う人たちは本当に大変だろうけど。
―矢實さんはこのシャツについてはいかがでしたか?
矢實:これ、甲斐さんにも言ってないんですけど、僕がパタンナーのキャリアの最初で勤めた会社が〈ヴァン〉のデザイナーさんが立ち上げたブランドだったんです。だからやっぱり一番最初にやったのはB.D.シャツで、トラッドなB.D.シャツは何となくずっと自分の根底にあるんで力が入りました。
小林:またもや名キャスティング…。すごいなぁ。
―ですね。あとは、やっぱり右胸の刺繍についても触れておきたいなと思います。
小林:グレイトフル・デッドは逆から読むアルバムタイトルがあったりとか、デッドヘッズはよく言葉遊びをやってたんだよ。 この「Ph」っていうのもそのノリ。“F”で始まる単語を “Ph”に変換する遊びをフィッシュのファンがやっててさ…アメリカでフィッシュのライブに行ったとき、ボストンからメイン州まで8時間ぐらいかけて車を走らせたんだけど、田舎道の途中にトラックが停まってて、荷台にバカデカく「Phood」と「Drink」って書いてあって、サンドイッチとか売ってるの。一般の人には素通りされるとしても、ヘッズたちにはそれが“フィッシュのファンがやってる屋台だ”ってちゃんと伝わってるんだろうなって。隠語的な感性だね。
甲斐:「Ph」の刺しゅうは今回も入れたいと僕からお願いしました。前にやらせてもらった時も刺しゅうは入れてもらっていたんだけど、あれをトレック仕様にしたいと思って。
小林:本当は馬に乗ってポロやってる人の刺しゅうを入れたかったんだよね。
甲斐:(笑)。
―色んな人に怒られそうですね。
甲斐:(笑)。B.D.にイニシャル入れてる人、いるじゃないですか? あれがやっぱいいなぁって。
M-51 FIELD CARGO SHORTS -SATIN
M-51 フィールドカーゴショーツ サテン
VIEW PRODUCT〈M-51 FIELD CARGO SHORTS-SATIN〉
―続いてはカーゴショーツを。
小林:トレックショーツね。トレイルを歩いてるときには(下着着けずに)コレ一枚で履いて、ベルトもしないで済むようにウエストにはヒモも付いてる。これは要するに野糞パンツですね(笑)。
―えぇっ!?
小林:ポイントはお尻を見られないで用を足せるってこと。なるべくなら人に尻は見せずにコトを済ませたいよね(笑)。
―なるほど。そういうギミックだったんですね…!
小林:インドネシアとかに行くと、男の人が腰の周りに布を巻いてるじゃない?腰巻きを上げてすればいいだけだからお尻を見せずに済むみたいである意味理にかなってるんだけど(笑)、俺はそれをトレックでやろうと思ったの。
甲斐:矢實:(笑)。
―説得力がすごいですね(笑)。
小林:根元は〈ヴィヴィアン(ウェストウッド)〉のボンデッジ(パンツ)からなんだけど、あれだって脱ぐのが面倒だから、ファスナーだけ開けてそのまま排便させるためのものなんじゃないかな…?
甲斐:小林さんとも前にその話をしたんですけど、山の中で一番困るのはトイレがないこと。それだけなんですよ。あとは何も困らない。疲れたら休めばいいし。
小林:嫌なら帰ってもいいわけだしね。でも…野糞をテーマにしたズボンはまだ見たことないでしょ?(笑)。
―無いですし、今後も出会えなさそうだなとは思います。
小林:それをやる分、他のディテールの雰囲気は完璧に出せてないとカッコ悪くなっちゃうからさ。
甲斐:僕はオリジナルの軍モノをいつもカットオフして履いていたので、それをショーツにさせてもらいました。
小林:裾にもドローコードが入ってるけど、カットオフしてもらってもいいと思う。コレはぶっちゃけ甲斐に野糞をしてもらいたかっただけなんだけどね(笑)。
―これは中目黒で使う機能ではないですよね?
小林:だったらヤバいよな(笑)。
甲斐:矢實:(笑)
FATIGUE CROPPED PANTS -SATIN
ファティーグ クロップドパンツ サテン
VIEW PRODUCT〈FATIGUE CROPPED PANTS-SATIN〉
―最後はいわゆるベイカーですね。これも、股下のディテールを除いたらかなり軍モノに忠実ですね。
甲斐:これは自分が一番好きなシルエットにしました。
小林:よくできてると思う。とにかくベルトを使わずに履けるっていうのが大事だね。
―実際トレックに行かれるとき、おふたりはノーベルトが多いです?
小林:ベルトはほとんどしない。普段の生活で普通のパンツだとベルトはせざるを得ないんだけど…トレックだとベルト持っていきたくないし、ヒモが付いてないと困る。そもそもがダラダラ歩くことを是としてるわけだから、それで良いと思うし。
甲斐:形はテーパードしている古い時代のシルエットです。少し短めの8、9分丈くらい。ゴツい靴にも合う。
小林:フルレングスだとめんどくさいよね。濡れるし、汚れるし。
―でもやっぱり股周りが異質ですね。この構造はすんなり形にできたんですか?
矢實:以前に小林さんがつくられたボンテージパンツをサンプルとしてお借りして、それを見ながら今回は作りました。〈セディショナリーズ〉とかあそこらへんをネタに持ってくる人ってなかなか少ないでしょうし、そもそも持ってないでしょうしね。
小林:年月とともにロックな感じも変化してきて、あの妙なバランスも受け入れ難くなってきてるのかもね。
矢實:今回はこのフロントのファスナーの空きのところの設計図だけで、B4の説明書を丸々一枚使うみたいな感じになっちゃいましたね。表から見た図と裏から見た図を入れて…説明するのがちょっと大変でした。
甲斐:(笑)。
小林:だろうね(笑)。
矢實:結局縫う人が見て、理解できるような説明書をつくってあげなきゃいけないので。そういう意味でも先人はすごいなと思いますよ。
小林:当時はそれ以前に誰も具体的なものを見たことがないわけじゃん? 少なくとも俺たちは先人たちがつくったものを見たことも触ったこともあるわけだもん。
矢實:オリジナルのデザインを生み出すって、考えると本当にすごいことですよね。
小林:一番最初の、画用紙に何も描いてないところに線を引く行為は大変だよね。
矢實:そうですね。もちろん機能のことを考えてデザインしているはずだし。
―こじつけかもしれないですけど、アウトドアで言うところの“未踏をねぶる”みたいに前例が無いことをやりたいっていう感覚があるんですか?
小林:俺はないよ。見たことあるもの同士を組み合わせてるだけだから。こっち(矢實さん)にはあるんじゃない?
矢實:今回も「やってみて」と言われて、あらためて設計図をつくってみたらこんなにメンドクセぇんだなって思いました(笑)。小林さんからお借りしたサンプルはもうちょっとセディショナリーズに寄ってたと思うんですけど、裏側の構造を二つ折りのロックが見えないようにとか、タフさを自分で足してみようとか、軍パン的な要素を勝手に入れさせてもらってます。
小林:それがあるか無いかが大きなポイント! 設計して縫ってくれる人が上手いことやってくれると形になる。そこがおもしろいよね。
―こうやってお話を聞いていたら、願わくば矢實さんにもおふたりと一緒にトレイルへ繰り出してほしいなと思いました。
矢實:いや…ちょっとしばらくは仕事が忙しいんで…すみません(笑)。
甲斐:(笑)。
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