【ALTRA OLYMPUS275 レビュー】in裏岩手縦走路
こんにちは、BAMBOOSHOOTSスタッフの坂本です。
今回はALTRAの新しいモデル『OLYMPUS275』を東北の山で試してきました。ALTRAのトレイルシューズはLONEPEAKばかり履いてきた私は、OLYMPUSシリーズを使用するのは「OLYMPUS4」に続いて2足目です。ここでは主にLONEPEAKとの違い、通常モデルの「OLYMPUS6」との違い、山での実際の使用感を軸にレビューしていきたいと思います。
メンズは2色展開、スポーティなBLACK/YELLOWと落ち着いたTAUPE
・モデル名の由来
多くのランナーの膝の故障は踵とつま先の高低差が原因ではないかと着目したALTRA創業者は、当時の市場に存在しなかった理想的なシューズを作るため、先ず既製品を改造するところから始めました。自宅のオーブンでソールを温めて削り、ゼロドロップを生み出した温度こそまさに華氏275°F(摂氏135℃)ALTRAが産声を上げた瞬間であり、ブランドを象徴する数字である”275”が冠せられた特別なモデル。
・OLYMPUS6との違い
前提として、Vibram® Megagripのアウトソール、EVAのミッドソール、ALTRAのトレイルシューズで最も厚いスタックハイト33mmのソールは「6」も「275」も同じ仕様。ラグパターンは私が以前履いた「4」から殆ど変わっていない気がしますが、接地感は硬くなっている印象で厚底シューズにありがちなふわふわ感はさほど感じません。フットシェイプ(シューズ幅)はどちらもORIGINALで、靴のベースとなる部分は変わらない。
大きく異なるポイントは、踵周りに新たに付けられたスクリースリーブ、そしてアッパーにALTRAで初めて MATRYX®が採用されたこと、それにより「OLYMPUS6」と比べて約50gの軽量化に成功しています。スクリースリーブが付いたことでシューズ内へ小石等の異物が入り難くなり、お馴染みGAITER TRAP(ゲイターを取り付けるための機構)は廃されています。
OLYMPUS6/26cm/350g
OLYMPUS275/26cm/301g「6」と「275」の重量を比べると、実測350gから301gへ14%の軽量化。因みに同サイズの「LONEPEAK9+」が実測290gだったので、その差僅か11g、軽さ重視でLONEPEAKを選ばれていた方は一考の余地があるかも知れません。

・MATRYX®とは?
タイベック®で有名な米国デュポン社が開発したケブラー®と高強度ポリアミドを組み合わせた革新的なテキスタイル。その特徴を端的に言えば”強くて軽い”ケブラー繊維は防弾チョッキや防刃グローブにも使われるスーパー繊維で、引っ張り強度だけで言えばあのダイニーマをも凌ぐ。その特徴を生かしたMATRYXは、最近では他ブランドのトレランシューズでも採用されている高機能素材。
そんなMATRYXを立体的に織りあげ、シーム箇所が少ないことで更なる強度の向上とフィット感を実現。ワンピース構造の恩恵はそれだけでなく、オーバーレイパーツがなくなり一枚地となった「OLYMPUS275」は写真から見て取れるようにアッパーが透けるほど薄く、「LONEPEAK9+」と比べても通気性が際立って良い。薄いからと言って不安な感じはなく、耐久性と軽さと通気性の全てを兼ね備えています。
・サイズ感について
サイズ感が従来のモデルと若干異なるので触れておきます。「OLYMPUS275」で私は26cmを履いていますが、アッパーが二枚の生地で構成される「LONEPEAK9+」では26.5cmを履いています。「OLYMPUS6」も同じようにアッパーとシュータンが厚く、アキレスピローパーツで踵周りにボリュームがある分26cmだと少々窮屈、同じオリジナルシェイプのシューズでもアッパーの厚みで微妙にサイズが変わる為、可能であれば店頭での履き比べを推奨します。
<使用レビュー>

※スーパー地形より引用
今回歩いたのは、八幡平と秋田駒ケ岳を結ぶ”裏岩手縦走路”。6年前に岩手山から八幡平まで歩いた時は雨の中だったこともあり念願の再訪。現在は岩手山が噴火警戒レベルの上昇に伴い入山禁止となっている為、八幡平から秋田駒ヶ岳へ南下するコースを選んだ。安比高原駅から歩く計画を立てていたが、同行者の体調不良と天気予報の悪化を踏まえ八幡平までバスでアクセスし、日程と距離を短くしました。靴のレビューは50km程歩いた上での使用感となります。
草紅葉が始まり秋めく八幡平。アクセスも良く登山客で賑わっていました、せっかくなので縦走路へ入る前にぐるっと一周。
展望ポイントの険阻森からの景色。裏岩手縦走路は人が少なく、50km歩いてすれ違ったのは片手で数えられる程度。コース上はぬかるみや火山らしいザレ場もあり、下山時には強い雨に見舞われて、シューズの試し履きには打って付けでした。
いつも足袋で山を歩いてる同行者。今回は「OLYMPUS6」を履いて同じ行程を歩いたので、私が履いている「OLYMPUS275」の良い比較対象となった。
草紅葉が始まり秋めく八幡平。アクセスも良く登山客で賑わっていました、せっかくなので縦走路へ入る前にぐるっと一周。
展望ポイントの険阻森からの景色。裏岩手縦走路は人が少なく、50km歩いてすれ違ったのは片手で数えられる程度。コース上はぬかるみや火山らしいザレ場もあり、下山時には強い雨に見舞われて、シューズの試し履きには打って付けでした。
いつも足袋で山を歩いてる同行者。今回は「OLYMPUS6」を履いて同じ行程を歩いたので、私が履いている「OLYMPUS275」の良い比較対象となった。
夕食はTHE SMALL TWIST『麻婆茄子&生姜ご飯』※店頭限定販売
この日はアップダウンの穏やかなルートで、サクッと目的地の三ツ石避難小屋へ到着。今回歩いている十和田八幡平国立公園は、縦走路中にテント指定地がなく幕営できません。その代わり立派な避難小屋が点在しているので、縦走では基本的にそこを利用することになります。
積雪の多いこのエリアはどの避難小屋も二階建てで広く、トイレも薪ストーブもある。おまけに水場が近い場合が多く非常に快適。(地元有志の方々が管理しています。強制ではないが料金箱へ協力金の投入や、トイレ利用の際は持参した紙を使うのが望ましい)小屋では先客の秋田に住まうおじ様に東北の山のおすすめルートを色々と教えていただき、楽しい時間を過ごした。
翌日は夜明け前にザーっと雨が降り、避難小屋からぬかるむ登山道を一気に600m降る。アウトソールが滑りにくい素材でもドロドロの路面だとグリップはあまり効きませんよね。しかし、OLYMPUSシリーズはブロック状の深いラグパターンとラグの間の溝の働きで目詰まりし難く、ぬかるみでも地面をしっかり捉えてくれます。この点はLONEPEAKと比べても優れてるなと感じます。
私は元々厚底シューズに苦手意識があって、LONEPEAKや更に薄いベアフットシューズを好んで履くことが多い。山だけなら薄底で良いけれど、舗装路含めて一日60km以上歩くとやはり足裏への負担を感じ、四国遍路を歩く時に初めてOLYMPUSを使用しました。結果的に1600km歩いても壊れない耐久性を信頼し、歩荷の仕事でも使用していました。底に向かって台形に広がるソールはLONEPEAKよりも接地面積が広くトラクションがかかるし足を捻り難い、50kgの荷物を担ぐような歩荷ではその安定感が大変頼りになりました。

乳頭山から秋田駒にかけて大変気分の良いトレイルが続き、ゴールするのがもったいなくて何度も何度も立ち止まる。願わくば池塘の傍でぼけーっと微睡んでいたい…。笊森山付近は足元が見えない濃いめの笹藪が続くのですが、ここもOLYMPUSの安定感に助けられました。グリップは効くし笹の中で見えない岩を蹴ってしまってもトゥーガードがしっかり足を保護してくれます。

ガスの間から見える森吉山や田沢湖、そして歩いてきた稜線を眺め、最終ピークお約束のおさらい山座同定大会。ここまで天気に恵まれてたけれど、ここから予報通りならば大雨に変わるらしい…
秋田駒からの下山は土砂降りの雨、下山路は川のようで靴の中は瞬く間に浸水。下山後は、今回のゴール玉川温泉で地熱による天然の岩盤浴で身体を癒し乾かした。翌日も同行者と一緒に行動したのですが、同行者の「OLYMPUS6」は暫く乾かなかったのに対して、私の「OLYMPUS275」はびしょ濡れの状態から半日程履いていたらすっかり乾いてしまった。ソックスに『DRYMAX』を履いていたことも手伝って驚異的な抜けの良さでした。

岩盤浴で2時間寝続けた筆者。
<終わりに>
強く軽く進化した「OLYMPUS275」MATRYXの強度によって実現した透けるようなアッパーは圧倒的な抜けの良さも獲得した。新たに搭載されたスクリースリーブは、伸縮性のある素材で足首に吸い付くようにフィット、アッパーのワンピース構造も相俟って足との一体感が気持ち良い着用感。「OLYMPUSは踵が抜ける感覚がある…」といったユーザーの声を耳にしていましたが、スクリースリーブの適度なホールド力でこれは改善されたと思います。
火山のザレ場や笹藪を歩いても異物の混入が無くゲイター要らず、フィット感と機能性が素晴らしいパーツだと思いますが、靴の脱ぎ履きが少しだけし辛い副作用もあります。しかし、異物の入り難さ、その軽さ、蒸れ知らずな通気性の高さのお陰でストレスなく履き続けることができるので、行動を終えるまでこの靴を脱ぐ必要はないでしょう。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
坂本
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