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【台高山脈ハンモック縦走】日本でいちばん山深いところ〈後編〉
<前編>はこちらから←
<3日目>
縦走3日目。この日は名だたるピークも明神平のような開けた場所も無く、おまけに電波も踏み跡もあまり無い、ひたすら無人の樹林帯でアップダウンを繰り返す、静かな一日。

台高山脈はずっと稜線を歩くので、水場は基本的に鞍部から更に降った沢の源頭。日本屈指の多雨地帯だけあり、沢が多く水の確保はそこまで困りません。沢周辺は動物の気配が濃くて鹿の死体が沈んでいました、浄水器は必須だと思います。
今回は元々雨予報で覚悟の縦走でしたが、直前で一気に好転。日中は思った以上に気温が上がり、小まめに虫除けと日焼け止めを塗りながら歩く。小物はポップなプリントがよく目立つLiteAF『PRINTED ZIPPER POUCHES』へ入れておけばザック内で迷子にならないですし、マチのないポーチはCONTOURのボトムポケットと相性が良く、ザックを下さずに日焼け止めの塗り直しができます。
翻ってマチ付きが嬉しいHyperlite Mountain Gear『ZIPPY』1Lサイズはガジェットの収納に丁度よく。モバイルバッテリー、コード、ヘッドライト、ランタン兼予備ライト、下山後に使うACアダプタ…とごちゃごちゃ入れておくにはこの広いマチと大きな開口部が使い勝手抜群でした。ギアフリーク心をくすぐる逸品、ZIPPYシリーズは5月中旬に再入荷予定。
台高はブナやヒメシャラの森に混じって檜や栂の巨木、紀伊半島らしい高野槙の群落に出会え、孤独で長い樹林帯歩きを楽しませてくれます。豊かな森には季節毎に訪れたくなる、GWは石楠花も咲いて見事でしょう。
この日は日没後まで歩いて野営適地を探すも、細尾根上で適切な間隔の木もフラットなスペースも中々見つかりませんでした。辿り着いた無名のピークから縦走路を外れ、支稜線へ入った先でようやく野営。広角で撮った写真で分かりにくいけど、この尾根は細く上り勾配でビビィ泊すらままならないポイント。改めてハンモックの強みを実感した一夜となりました。風は強かったけど面倒なのでこの日もタープは張らずに就寝。
<4日目>
いよいよ長い縦走も後半戦。台高山脈の奥地は相変わらず踏み跡は葉に埋もれ、ピークからの降りで違う尾根に入ってしまうこともしばしば。たまに標識があったかと思うと小さいテプラなのがなんとも憎らしい…。お陰で何度もスルーしては引き返してで楽しかったですよ。
紀伊半島は元々台風被害が多く、大木が倒れゴロゴロ転がっていました。大台ヶ原は昭和30年代の伊勢湾台風で木々が薙ぎ倒されてしまうまで、苔むした栂とトウヒの森でした。屋久島や北八ヶ岳の様な山岳世界だったといいます。
大台ヶ原に辿り着いたのは山開きの翌日で、数日ぶりに人の声を聞く。駐車場の物産店ではランチメニューの看板が目に入り、頼みたい欲望をなんとか抑える…まともな食事は下山後のお楽しみ。ビジターセンターを覗き、自販機で買ったコーラだけ飲んで山頂へ進みました。実利行者と古川嵩が修行した、松浦武四郎が魅了され生涯をかけた、神秘に包まれた100年前の大台ヶ原に強く憧れるも、ここは素直に開発の恩恵を一本のコーラから受け取った。
日出ヶ岳を登頂し、台高山脈の”台”まで無事に完歩。だけれどまだまだ通過点、私は海を目指します。次は秋に紅葉の大杉谷と西大台へ菌類の観察に訪れたい。雨の多いこの地はきのこの聖地で、オオダイと名のつくきのこも存在する。これまでのワイルドな破線ルートから打って変わり、観光地と化した大台ヶ原の木道を軽快に歩いて先へ進みます。

尾鷲辻から南の尾鷲道へ進むと人の気配はなくなり、再び静かな山歩きが楽しめた。国内最大規模の太平洋型ブナ林や国内南限のトウヒの純林。伐採と災害から逃れて残る貴重な自然は、今では増えすぎてしまった鹿の食害の危機に晒されています。ブナは発芽してもすぐに食べられ幼木が増えず、網で保護されていない尾鷲道のトウヒや栂は鹿による剥皮被害で立ち枯れが目立つ痛々しい状況です。

雨予報だった縦走4日目は、ガスりはするも結局降られず行動を終えました。夜中の雨に備えてしっかりタープを張って眠りに就く。なだらかな広尾根が多い静かな尾鷲道の森は、テント泊で歩く登山者が多いようです。尾鷲道単体でも健脚向けのロングコース。
ハンモック泊最後の夜、気持ち良く入眠する間際に天気が荒れ始め、翌朝まで強烈な風が吹き続けました。あまりの強さにタープのループが破断してしまい、頭上で暴れ狂うタープ。それを鬱陶しく思いながら、とにかく早く夜が明ける事と風による落枝が無い事を願いながら、眠れぬ長い夜を過ごしました。
<5日目>
昨夜の風が嘘のような静かな朝。ヒメシャラが朝日に照らされ燃える様に美しく染まっています。
マブシ嶺に着いたと同時に東の海から日が昇る。熊野脇道や伊勢路で歩いたリアス海岸が見えています。何処を見ても山しか見えなかった深い山脈を歩いてやっと捉えた海。今日はあの海を目指して歩く。
海からの日の出、振り返れば大峰山脈のモルゲンロートを同時に楽しめる大展望のマブシ嶺。なんて贅沢な景色でしょう…
南奥駆道や本宮道の山々、海岸線を見ても山並みを見ても歩いた記憶が鮮烈に蘇ります。
今回のトレイルを含めると紀伊半島を累計1300km歩いたことになる。でもまだまだ歩きたい道や訪れたい場所が沢山あるんですよね
尾鷲道は、尾鷲辻から古和谷まで有志団体によって標識とピンクテープが付けられ非常によく整備されています。
沢へ降る前にはこんな立派な看板も。大台ヶ原と尾鷲を結ぶ古道尾鷲道、その存在を知ってからずっと憧れていた道なのもあり、歩き終えてしまうのが実に名残惜しい…
沢に出てからはピンクテープも踏み跡も消え、ルートを見極めながら沢の渡渉を繰り返して降って行きます。釣りキチ小僧だった私は岩陰からたまに走る岩魚の魚影が気になって仕方ありません…
尾鷲道は大台協会への参詣道として整備され、その後は木材搬出の為に活用されていました。森林鉄道のレールも未だ残っています。鉄道遺構が出てくる辺りから道は明瞭になるも、朽ちかけの橋を複数回渡るのでまだまだ気は抜けません。
最後に長い林道を歩いてあっという間に尾鷲の街へ。今回は市街地を南下し、海に出ることをゴールとしたので、まだ少しだけ歩きます。途中、立派な楠の御神木がある尾鷲神社にご挨拶。
尾鷲市街地にはちょうどお昼頃到着し、ゴールが待てずに気になっていた喫茶店で腹ごしらえ。純喫茶天国でもある紀伊半島、こちらも素晴らしい雰囲気のお店でした。お店のお母さんが「今日の日替わりランチはメンチカ…」と言い切る前に食い気味に「それでお願いします!」と答える。五日ぶりに食べる血の通ったご飯が染みました。ボリューム満点なメンチカツ定食は650円。ご馳走様でした。

尾鷲道は、尾鷲辻から古和谷まで有志団体によって標識とピンクテープが付けられ非常によく整備されています。
沢へ降る前にはこんな立派な看板も。大台ヶ原と尾鷲を結ぶ古道尾鷲道、その存在を知ってからずっと憧れていた道なのもあり、歩き終えてしまうのが実に名残惜しい…
沢に出てからはピンクテープも踏み跡も消え、ルートを見極めながら沢の渡渉を繰り返して降って行きます。釣りキチ小僧だった私は岩陰からたまに走る岩魚の魚影が気になって仕方ありません…
尾鷲道は大台協会への参詣道として整備され、その後は木材搬出の為に活用されていました。森林鉄道のレールも未だ残っています。鉄道遺構が出てくる辺りから道は明瞭になるも、朽ちかけの橋を複数回渡るのでまだまだ気は抜けません。
最後に長い林道を歩いてあっという間に尾鷲の街へ。今回は市街地を南下し、海に出ることをゴールとしたので、まだ少しだけ歩きます。途中、立派な楠の御神木がある尾鷲神社にご挨拶。
尾鷲市街地にはちょうどお昼頃到着し、ゴールが待てずに気になっていた喫茶店で腹ごしらえ。純喫茶天国でもある紀伊半島、こちらも素晴らしい雰囲気のお店でした。お店のお母さんが「今日の日替わりランチはメンチカ…」と言い切る前に食い気味に「それでお願いします!」と答える。五日ぶりに食べる血の通ったご飯が染みました。ボリューム満点なメンチカツ定食は650円。ご馳走様でした。
そしてついにゴールの尾鷲港に到着!局ヶ岳からスタートし、圧倒的山深さを誇る奈良と三重の県境稜線を100km歩き、尾鷲に着いて拝む海、浴びる潮風、心地良い疲労感と達成感に酔いしれる。
…今から7年前、吉野山から那智の海を目指し、大峯奥駈道と中辺路を150km歩いた経験が紀伊半島にのめり込むきっかけでした。”熊野三千六百峰”と称され無限にも思われる深い山々。一方、果てが無いようにも思われる熊野灘の彼方に、中世の人々は浄土を見出し”補陀落の海”と呼んだ。日本最大の半島である紀伊半島の自然は底が見えない程に深い。先人たちはそれを畏れ敬い、熊野特有の信仰世界を構築した。現代の私は歩くという行為を通してその深さを実感しています、今回も5日間のハンモック泊縦走で紀伊半島の自然を存分に満喫することができました。
<終わりに>
遅ればせながら今回のレイヤリングをサラッと紹介。長期縦走ではレギュラーメンバーな山と道『DF Mesh Merino』をベースに、強度と消臭性が頼もしい山と道『Bamboo Shirt』、朝夕の肌寒い時間と就寝時は中に凌『ハヲリモノ』を着ていました。ハヲリモノはオクタ製のカーディガンでレイヤリングしやすい8分袖仕様、ボタンを開けて一気に換気ができるので、シャツとの相性が抜群です。ボトムスはGramicciのナイロンパンツ。
シューズはALTRA『LONEPEAK9+』詳細は是非ファーストレビューをご覧ください。不明瞭な登山道で5日間連続使用するに、履き慣れたLONEPEAKはやはり安心感があり、後半の沢ではそのグリップ力が頼もしかった。9+ではアッパーの強度が向上し、裏地の構造が変わった影響か、私が履いてきたLONEPEAK歴代モデルと比べて少々蒸れやすさを感じました。上の写真は台高山脈を歩き切り、累計300km以上歩いた状態での一枚。特筆すべきは、今まで200kmも歩けば踵の内側が擦り切れていたのに対し、9+では全くダメージが見られない点。そしてVibramMegagripに変わったソールは明らかに摩耗しにくくなりました。テクニカルなルートを除いたULハイキングにおいて最もオススメな一足。今回のアップグレードでよりクオリティが上がりました。
BAMBOO SHOOTS実店舗では、GW期間の5月6日までLONEPEAKとOLYMPUSの試し履きイベントを開催中です!メンズ・ウィメンズモデル共に各サイズご用意しておりますので、この機会に是非お気軽にご来店ください。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
坂本
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