BAMBOO SHOOTS MOUNTAIN JOURNEY vol.18

トレックシリーズの新作完成を機に
再びマウンテンリサーチ・小林節正さんのもとへ

 

 

 

甲斐一彦(以下、甲斐):小林さんとコラボさせてもらっている「トレックシリーズ」の新しいアイテムが完成したということで、お邪魔させてもらいました。

 

小林節正さん(以下、小林。本文中敬称略):このベストは、着倒す勇気がありますかってことだよね!?

 

甲斐:常連の人とかは欲しい欲しいって言ってましたよ。「バックパッカーズ パネルド ハンティングベスト」という名前通り、切り返しのパターンが斬新ですよね。

 

小林:ちょっとした思いつきだったんだけどね。アウトドアだと大きいパネルで切り替えた洋服ってけっこうあるでしょ。バイカラーとか。でも多くは直線で構成されたパネルの切り替えだし、この際、まっすぐじゃないがあっても良いなと思ったんだ。

 

甲斐:フロントは曲線で、バックが直線の切り返しになってるんですよね。タヌキポケットの曲線を利用した感じとか、絶妙です。色のチョイスはどうやって決めたんですか?

 

小林:単純に赤紺とか、エンジと紺の組み合わせが好きだから、かな。毛布でも同じような色合いのを随分と作ってきたじゃない?

 

甲斐:小林さんのテーマカラーなんですね。ラガーシャツっぽい感じもあって良いですよね。

 

  

小林:濃度が同じ2色を選んであるから配置や範囲のバランスを変えると大きく印象を変えられるのも面白いよ。彩度と濃度が大きく違うと、組み合わせがおのずと決まってきちゃうから、自由度が少なくなっちゃうんだけどさ

 

甲斐:アイボリーのボタンも良い感じです。

 

小林:ちょっとレゴっぽくて可愛いでしょ。

 

甲斐:細かいところでいくと、ステッチもすごいですよね。ネイビー地のところに赤のステッチが出てきていて、逆もそう。このステッチの出方がとても綺麗だなと思います。

 

小林:要するにめんどくさいってことだよね。縫う人からしたらなんで下糸まで変えなきゃいけないんだよ!っていう職人さんの怒りの声が聞こえてきそうなんだけど…。

 

甲斐:でもすごく面白いことになったから、このディティールは今後もやっていきたいですけどね。

 

小林:もう二度とやってくれないんじゃない?

 

甲斐:この切り返しの配置とか大きさってどうやって決めていくんですか?

 

小林:赤と紺色の生地を用意して、実際に切って置いてみる。

 

甲斐:アナログなんですね。ちょっとアートっぽい感じありますね。

 

小林:というよりは現場的な手作業だよ。パネル切り替えのミソは色の分量だから実際に試してみるしかないんだよね。PCの画面上でやっていても微妙な按配がよくわかんない。実寸の大きさで切ったり貼ったりやるのが、やっぱり俺には向いてる。せっせとやってるうちに調子が出てきたものだから(笑)、パンツまで用意して三つ揃いでやるつもりだったんだよ、本当は。そしたらマウンパ甲斐がさっさと色を変えてきてくれたっていう…ね。

 

 

甲斐:いやー、赤紺、格好いいんですけどね。でも、いろんな人に相談したら「レベル高くない?」って話になって。機が熟したらやりましょう。

 

小林:つまり、ビビったと(笑)

  

 

 

甲斐:で、「バックパッカーズ パネルド マウンテンパーカー」は僕が考えたビビリ色にさせてもらったと(笑)。イメージとしてはアウトドアウェアでよくある、色は一緒なんだけど、素材違いの切り返しです。同じ色なんだけど素材違いだからパーツごとの表情が違うやつ。だから今回のも似たようなグレーの切り返しにしてみました。

 

小林:なんでこの色だったの?

 

甲斐:グレーのグラデーションが好きなので、小林さんに変えてくれって言うからには譲れない色じゃないと、という感じです。このマウンパの中に赤紺ベストを着たら、引き立つんじゃないかなというのもありました。逆パターンを作っても良いかなと思ってるんですよね。赤紺のマウンパとグレーのベスト。

 

小林:背中も可愛いんだよね。パネルが山ラインになってる。

 

甲斐:背中側のジッパーを開ければ、バックパックを中に背負った状態で着られるというギミックは変わらずですね。

 

小林:コレ、いっつも撮影が難しくってね…。背中のジッパーを開けても、バックパックを中に背負ってないと、結局閉じたような見た目になっちゃうし、雰囲気を伝えずらくって。

 

甲斐:風吹かすとかですかね。

 

小林:スティーヴ・ヴァイじゃないんだから (笑)

 

 

 

 

甲斐:そうだ。小林さんとやってるもうひとつのシリーズ「Ph」のほうの新作も持ってきたんですよ。「PHANTASIATシャツを速乾素材にしてみたんですよ。

 

小林:いいじゃん。

 

甲斐:春発売予定です。

 

小林:いま一瞬、星の部分だけ何色かで刷ってるように見えたけど、細かくやってるんだねー。これさ、星の部分だけラインストーン版とか作ってよ。

 

甲斐:あー、いいですね。

 

小林:ラメでも良いよ、お星さまがキラキラしてくれてたら。

 

甲斐:今度限定で作りましょう。

 

 

小林:黒ベースでラインストーン。ぜったい可愛いよな。版もちょっと大きめにするといいかもね。

 

甲斐:偽物の石でいいですか?

 

小林:もちろん。ホンモノ使ったらいくらになっちゃうのよ?


 

甲斐:ですね(笑)。トレックシリーズも背中が開くマウンパの他にも、股が開くベイカーパンツ、横が開くシャンブレーシャツとかニットもあるんで、年イチとかで派生形を作っていきたいですね。

 

小林:開けばなんでも良いみたいになってきたな。次はどこが開くのか? みたいな(笑)。

 

甲斐:とりあえず、ちゃんと語れる服を作っていきたいですね。乱発する必要はないですよね。面白いディティールが思い付いたとか、使ってみたいパーツが見つかったとかそういうタイミングでいいのかなと。

 

小林:世の中、物が溢れすぎてるから、シーズンごとに作ってたら大変なことになっちゃうよ。このシリーズは遊びの感覚でやってる部分もあるわけだし、のんびりにしておきましょうよ

 

甲斐:で、物の話はひとまずこの辺にして、今後の展開なんかもできれば良いなと思ってたんですが。

 

小林:今後!知りたい(笑)

 

 

EDITOR/WRITER

櫻井 卓 TAKASHI SAKURAI

 

PHOTOGRAPHER

木本 日菜乃 HINANO KIMOTO