BAMBOO SHOOTS MOUNTAIN JOURNEY vol.20

出そろってきた山の服 甲斐が今思うこととは?
この「BAMBOO SHOOTS MOUNTAIN JOURNEY」も早いもので今回で20回目です。トップスからボトムスまで、2年目に突入して出揃ってきたバンブーシュートの山の服。今回はカタログなどには載っていない、開発裏話やこだわり、今後のビジョン、さらには反省点などをディレクターの甲斐に聞いてみました。
■MERINO WOOL SLEEVELESS TEE

メリノウールとポリエステルの混紡は、いろんなところがやっていますが、最大の特徴はやっぱりシルエットですよね。脇周りがかなり大きく開いている印象ですが。
甲斐:そこのバランス、苦労したんです。パターンも2回くらいやりなおしてます。レディースのノースリーブのカットソーなんかのシルエットも参考にしつつ、脇は大きく開いてるんだけど、脇下が余り過ぎないような、そんなシルエットにしました。タンクトップって体が仕上がった人しか似合わないという感じがあると思うんですけど、これならそこまで仕上がってなくても大丈夫だと思いますよ(笑)。
肩の部分の幅が通常のタンクトップに比べると広いですね。
甲斐:バックパックを背負った時に干渉しないようにという意図なんですが、ぎりぎり肩から落ちない幅にはしてます。袖をただ切っただけのノースリーブだとボディビルダーの人が着ているようなカットオフTになっちゃいます。袖口に微妙なアールを着けることで、開口部は大きいんですが、ダラしなくはならない。そんなラインを狙いました。
メリノ100%にしなかった理由は?
甲斐:まずは値段ですね。ただ混紡にすることでメリットも大きくて、メリノって汗冷えしにくかったり臭いが出にくかったりが大きな特長なんですが、同時にちょっと乾きにくさはあるんですよね。そこにCOOLMAXという速乾性の高い素材を混ぜることで、両者の良さがバランスできたと思ってます。


■MERINO WOOL 1/2 SLEEVE BASE BALL TEE

山でベースボールTEE。なかなか新鮮ですね。
甲斐:不思議となかったですよね。腕周りの動きやすさをどうやって出すかと考えた時に、ベースボールTEEのラグランスリーブが最適じゃないかと思ったんです。ボールを投げるという行為にアジャストして生み出されたディティール。それ以上の可動域が必要なシーンって山ではないですもんね。
着てみた感じ、袖自体は長いのに風抜けは良かったです。
甲斐:それもラグランの良さですよね。普通のTシャツに比べると、脇の部分にかなりゆとりが出るから、そこから空気を取り込みやすい。
裾がラウンドになっているのは?
甲斐:大きめのサイズを着たときでも、サイドが短ければダラしない感じになりにくいんですよ。あとはシャツとかと組み合わせた時にも、前後だけはみ出す感じなので、レイヤリングしてもモタつかないです。
素材はノースリーブと一緒ですよね。この厚さにしたのはなぜなんですか?
甲斐:あまりヘビーオンスにすると乾きにくくなってしまうというのが一番の理由です。あとは風合いですね。古着でよくあるペラペラになっちゃったコットンTEEみたいな感じで好きなんですよ。ただ首周りはバインダーネック(別生地で挟み込む)なので、ヨレヨレになったりはしません。チャンピオンの40年代。ランナーズタグの時代に生まれたディティールですね。



メリノのワッフル。これもありそうでなかった。
甲斐:肌触りの良さにくわえて、動くと暖かいけど止まると涼しいという絶妙な生地だと思ってます。実はアルファダイレクトのルーツを辿っていったらウールのワッフルなんじゃないかっていう勝手な想像から作ったアイテムです。
首元が紐とかではなくスナップボタン仕様なのは?
甲斐:昔のラッセルのパーカのディティールですね。なんだかいまパーカってオジサンしか着てないみたいなイメージあって、それを変えたいなという意図もこの形には込めてます。
袖はリブありですが、裾はリブなしですね。
甲斐:裾にリブがあると逆にお腹出ちゃうんですよね。それだと山には向かない。あとはレイヤリングした時の収まりの良さもありますね。メキシカンパーカみたいなのも意識してます。
これ、同じ生地でちょっと緩めのタイツとか作っても面白いんじゃないですか?
甲斐:昔のアメリカ映画でオジサンが寝間着で履いてるヨレヨレのワッフル股引みたいなやつですね(笑)。デカいトランクスみたいなものは作ってみたいです。僕がよくカルバンクラインのコットン地のデカトランクスを履いてるんですが、その感じ。
この素材シリーズは今後の展開が楽しみですね。
甲斐:スナップボタンの色だけ変えたりもしたいんです。例えばグレーにパープルのスナップボタンとか。昔のパタゴニアのイメージ。あとはカーディガンも作りたいですね。ジョン・スメドレーみたいなシルエットで。


■SHORT SLEEVE OPEN COLLAR SHIRT

これは甲斐さんが大好きな60年代米軍シャンブレーシャツがモチーフですね。
甲斐:60年代のアメリカ軍のモノって面白いんですよ。実験的なものがいっぱい出てるんです。シャンブレーもそうで、背中にヨーク(切り替え)がない。
バックパックを背負った時に干渉しないようになんでしょうね。
甲斐:ですね。そのまんま真似するのも面白くないんで、脇下にベンチレーションを付けてみたら、これが意外と機能するんです。特に中をメリノのタンクトップにすると、かなりちょうど良い。
着てみて思ったのが、これウィンドシェル的にも使えるんですよね。ロングスリーブ未満、ベスト以上みたいな感じで。
甲斐:山のシャツって2種類ありますよね。風を通さないものと、通気性を重視したもの。これは風を通しにくい生地を使っているのでそういう使い方ができるんだと思います。もっとペラペラの生地で作ってみても面白いかもしれませんね。脇にもっとベンチレーション増やしたり。本当はシークエルみたいにメッシュ生地で作ったりしてみたいですけど、さすがにチャレンジすぎますかね(笑)。


■MOUNTAINE HIKE PANTS

最近、山で履けるワイドパンツ増えましたよね。実は先駆けだったのでは?
甲斐:どうなんでしょうね。みんなそういう気分だったんでしょうね。改良要素としてはウエストのゴムをもう少しだけ緩めにしようかなとは思ってます。あとはDカンの位置。もしくは無くしちゃってもいいかもしれない。
ポケットの内側に鍵とか付けられるフックとかあっても便利かもですね。
甲斐:バックパックとかサコッシュで見かけるディティールですね。良いかも。ヒップポケットは右側だけ2分割式でスマホがすっきり収まるようにしているんですが、両方その仕様にするのもありかもですね。
裾を切り離せるコンバーチブル・バージョンは作らないんですか?
甲斐:作りたいですよねえ。やるとしたら昔のシナジーワークスのスナップボタンで留めるようなタイプとか。
ベルクロと組み合わせても面白いかもですね。ベルクロとスナップボタン2つで留めるとか。
甲斐:良いかもですね。あとはシークウェルであった切り離し部分がメッシュになってるやつ。なんらかの形でコンバーチブルは出したいです。いま元ネタになるものを探していて研究中です。


■MOUNTAIN HIKE SHORTS

ここまでワイドなショートパンツってなかなかないですよね。
甲斐:長めのショートパンツって、いろいろあるけどなんかシルエットがしっくりくるものがなかったんです。原型になったのはグラミチ初期にあったプロトタイプのクライミングパンツです。それ自体は長パンなんですがただ切っただけだと形が綺麗に出ない。だからワタリに対して裾をかなり絞ってみたんです。
なるほど。ただワイドっていうワケじゃないんですね。
甲斐:ただ山で履くとなると、足を上げたときに膝に引っかかるようなものはダメなので、長さと幅のバランスにはかなり気を使いました。
クセがありそうで、けっこう履いてみると誰でも似合っちゃいますよね。
甲斐:ショートパンツって脚の形でけっこう似合う似合わないが出ちゃうじゃないですか。O脚とかX脚とか、あとはすね毛が濃いとか(笑)。これだけシルエット太くしちゃえば、そういう所に目が行きにくいという狙いも実はあるんです。
なるほど。シルエット太いなって所に先に目が行くと。
甲斐:ちょっとおかしなショーツ履いてるよねって思ってもらいたいです。
ハミ金問題は?
甲斐:大丈夫です!


Photo/ HINANO KIMOTO
Text/ TAKASHI SAKURAI
Model/ DAISKETCH