BAMBOO SHOOTS MOUNTAIN JOURNEY vol.25
ジョリーギアのジョリーさんと
西伊豆キャンプ&ハイク

第一印象はとにかくBIG、でした。身長も髭も。でもとても優しい瞳をしています。その奥にはキラキラとした好奇心の光も。
彼の名前はジョリーさん。
バンブーシュートがディストリビューターを務める「ジョリーギア」の若きオーナーです。まだ若干28歳。
ジョリーギアは、ユタ州ローガンを拠点に「where fun meets functional(楽しさと機能性の融合)」というテーマで、シャツを中心としたアウトドアウェアを展開しています。
最大の特徴は自然からインスピレーションを受けたという華やかな柄と、長期ハイクにも耐える高機能を両立しているところ。唯一無二のブランドとして、アメリカのロングディスタンスハイカーにも大人気のブランドで、日本にも数多くのファンがいます。

今回はアメリカから来日したジョリーさんと友人のホイットニーさんを、甲斐たちバンブーシュートチームでアテンドすることに。
どこに行くかは正直迷いました。純粋な自然ではアメリカにはスケール感で及びませんし、かといってお買い物ツアーだけでは寂しい。

というわけで一行がまず向かったのは修善寺です。2人は街中の昭和レトロな雰囲気も気に入ったようで、看板などの写真を撮っています。
とにかくジョリーはジェントルな雰囲気です。こちらのブロークンな英語にもニコニコと分かりやすいようゆっくりと喋ってくれます。
ホイットニーさんはつねにジョークを言っていて、周りを盛り上げるのがとてもうまい。ホイットニーさんは長年アジアにアメリカのガレージブランドを紹介している人物で、日本にも何度も来たことがあるそうです。

まずは修善寺の「サンカクスタンド」へ。ジャパニーズガレージブランドも多数扱っていて、ジョリーさんたちは見たことのないギアたちに大興奮。ホイットニーさんは「凌」のアグラスカートに反応しています。

実はアメリカではガレージブランドの販売はネットが主流で、ガレージブランドのものを実際に手にとって見ることができるショップは少ないとのこと。
サンカクスタンドの2階は畳スペースになっていて、2人は「すごくクールな店作りだねえ」と大喜び。「アラタ」のテントの作りにも興味津々で、ホイットニーさんは実際に中に入って「ジョリーは入れないなあ(笑)」とジョークを飛ばします。
ジョリーさんは、さいきん日本酒にハマっているらしくエバニューのチタンぐい呑みと、靴下を購入。

サンカクスタンドを後にして、修善寺の駅前の食堂で昼食をとることにします。ジョリーさん、ホイットニーさんは名物のワサビご飯に挑戦。激辛反応に期待! と思ったら、割と平気なようで「めっちゃ頭すっきりするねえ」と美味しそうに食べていました。
次は西伊豆の宇久須キャンプ場へと移動。海際にあるこじんまりとした良いキャンプ場。
ホイットニーさんが甲斐が用意したゴーライトのテントに感激しています。
「わおシャングリラじゃん! レジェンドテントで泊まれるなんて最高だよ」
ジョリーさんは美しい夕陽を見つめています。もしかしたら、こういう色味からもインスピレーションを得ているのかもしれません。

キャンプサイトの設営を終えたら、近場の蕎麦屋さんで夕食を済ませてから、コンビニで宴の買い出しです。
「コンビニ、コンビニ〜♡」とジョリーさんとホイットニーさんが盛り上がっています。どうやら、日本のコンビニの品揃えにすっかりハマったようで、ジョリーさんはとくに「もちもちグミ」の虜に。
大量のツマミとお酒を買いこんで、キャンプ場へと戻ります。

アウトドア好き同士であれば、ギアや旅の話は英語が拙くても問題なし。そこにアルコールという潤滑油が注ぎ込まれれば、もう国籍なんて関係ありません。みんなで焚き火を囲んで多いに盛り上がります。
甲斐が日本らしさを重視して差し入れたワンカップも気に入ってくれたようです。それと熱燗も。ジョリーさん&ホイットニーさんはPatagonia PROVISIONSの日本酒も持参してくれています。

ジョリーさんがロングディスタンスハイキングを始めたのははお父さんがきっかけだったそうです。
「高校を卒業して、暇を持てあましていた僕をアパラチアントレイル(AT)に誘ってくれたんだ。歩きはじめて4日目、とてもキツくて『僕はこんなところで、いったい何をしてるんだ?』って気持ちになった。その時に父が『そのキツさを経験して欲しかった』と言ったんだ。ロングトレイルが父親からの最後の教育だったんだよ」
キツさを乗り越えATを歩ききり、それからパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)、コンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)もスルーハイクして、アメリカ3大トレイルをすべて制覇。トリプルクラウナーになったと言います。

そういったロングディスタンスハイキングを通じて、さまざまなインスピレーションを得て生まれたのがジョリーギアのオリジナリティ溢れる柄というわけです。
「別に派手なのが好きなんじゃなくて、ロングトレイルって僕らハイカーにとって特別なバケーションなんだよ。だったら華やかなシャツで行きたい。例えばアロハシャツみたいなね。でもアロハだと機能性がないよね。だから作ったんだ」
素材は高機能ですが、ボタンダウン仕様だったりあえてスナップボタンにしていないバランス感がとても良い。一見すると派手に見えますが、そこには花やキノコなど自然の要素が上手に落とし込まれています。
「ジョリーギアの花柄のシャツをトレイルで着てたら、ハチドリが寄ってきたっていう友人もいるよ」
宴もたけなわ。「なにか便利な日本語しらない?」というジョリーからの質問。少し考えてから「ヤバい」かな、と答えます。
「格好いいじゃん!もヤバいだし、大変だ!もヤバい。だいたいリアクションはヤバいでカバーできるかも。ただかなりカジュアルな言い方だからそこだけ注意ですね」
その語感もジョリーさん的に気に入ったらしく「ヤバい」で盛り上がりつつ、良い感じに酔いが回ったところでお開きに。本当はまだまだ盛り上がりたかったんですが、その前に薪がなくなってしまったという事情もありました。

翌日のハイクでは、みんな揃ってジョリーギア。驚いたのは、カメラマン含め6人がジョリーギアのシャツを着ていたんですが、誰もかぶっていないこと。
パターンの多さもジョリーギアの魅力のひとつで「次はどんな柄が出るんだろうと、子供のようにワクワクしている」というファンの声も。


ハイクは堂ヶ島からスタート。ここは西伊豆屈指の観光地で、ジョリーさんとホイットニーさんは、さっそく顔ハメパネルで記念撮影。堂ヶ島周辺には奇岩が多く、ぐるりと巡って、浮島海岸へと向かいます。

ホイットニーさんいわく「地元のオレゴンみたいだよ」という浮島海岸を過ぎると、いよいよ本格的なトレイル歩きに入ります。
トリプルクラウナーということで、さぞかし歩くのが速いのだろうと思っていましたが、周囲の自然をゆっくりと楽しみながら進みます。コースタイムよりだいぶかかっていますが、とても良い時間が流れていきます。
蜘蛛の巣、岸壁のグラデーション、波のうねり、道端の花。
ジョリーさんは、それらのものをじっくり時間をかけて観察しています。

実は、この西伊豆近辺を選んだのは、日本らしい風景が数多いという理由もありました。
そういえば、自然の中だとジョリーギアは派手に見えないんです。自然はこんなにもカラフルで、複雑なパターンであふれているんだと、ジョリーさんの目線によってあらためて気付かされました。


トレイルを終えて田子の漁港に到着。ジョリーさんが珍しくテンション爆上がりで叫んでいます。なにかと思えば、大きなタコ。そこからはもう、海中に夢中でイカや小魚などを見つけては子供のようにはしゃいでいます。
ホイットニーさんは日本の漁船が珍しいらしく、写真を撮りまくっています。自然だけでなく、文化にも興味をもつ2人にとって日本では当たり前のものたちも興味深く映るようです。

ゴール地点の田子からはバスで堂ヶ島まで戻ることにします。ホイットニーさんは小さなバス停に「トトロだ!」と反応します。そういえば、ホイットニーさんのバックパックにはトトロのキーホルダー。大ファンなんだそうで、日本に来たらトトログッズをなにかしら買っていくそうです。そういえば、ホイットニーさんってちょっとトトロに似てるかも(笑)。
お昼は堂ヶ島にある食堂へ。メニューを見ていたホイットニーさんが「ジョリーはこれだろ?」と指差したのはまさかのお子様ランチ。こんな感じでずっと冗談を言い合っているんです。

ハイキングからの温泉は定番のジャパニーズスタイル、ということで修善寺の温泉まで戻って、みんなで裸の付き合い。体もしっかり洗うし、大きな声ではしゃぐようなこともしません。しっかりマナーを守る2人からは、その国の文化へのリスペクトが伝わってきます。そしてジョリーの筋肉がとんでもない!さすがトリプルクラウナー。
寂しいけれど、バンブーシュートチームはここで一旦お別れ。彼らはそのまま新幹線で大阪へ。翌日から熊野古道を歩くそうです。彼らの旅はまだまだ続きます。
エンジョイ、ジャパン! ジョリー&ホイットニー!
願わくば日本の文化や自然など、今回の旅からインスピレーションを受けたパターンを作ってくれることを祈って。
Text/Takashi Sakurai
Photo/Kei Sato