《雲ノ平 伊藤新道》3泊4日で行く北アルプス黄金ルート -三俣山荘・伊藤新道編-

【雲ノ平編はこちら】

 

 

DAY3 (雲ノ平山荘-三俣山荘)

三俣山荘で道直し

3日目は4時半に起床。早々に支度を済ませ、目的地である三俣山荘まで歩く。

本日は三俣山荘に停滞し、山荘スタッフが精力的に行っている「道直し」プログラムに参加。

三俣山荘での「道直し」は同行したT先輩が昨年より積極的に関わっており、活動の内容を聞いて私も興味を持った。ちょうどよくタイミングも重なり今回の参加に至った。

朝の雲ノ平も幻想的で美しい。

黒部源流。登山道のすぐそばから湧水が湧いておりキンキンに冷えた水を補給できる。

三俣山荘には8時前に到着し早速テントを設営。

道直しの作業まで少し時間があったので、雲ノ平山荘で前日に用意してもらったお弁当を食べてエネルギーを補給。

お弁当はおにぎりが3つとちょっとしたおかずが入ったシンプルなもの。

いつも食べてる行動食(柿の種・ミックスナッツ・ジャーキーを混ぜたもの)もおいしいが、やっぱりしっかりとした食事には勝てないなと改めて実感。

特に味の染みたお稲荷さんは絶品だった。

 

道直しを始める前に三俣山荘のスタッフから道直しとは?という軽めの座学を受ける。

三俣山荘が実践している「道直し」は一般的な登山道整備と区別しているそう。

 

三俣山荘では「登山道整備」という言葉と「道直し」を区別して使っています。
簡単に言えば「登山道整備 → 登山者のための歩道・階段等の整備」、「道直し → 美しい山の風景としての道と周辺植生の修復」という感じでしょうか。
この二つは似ていて非なるもののように思います。
つまり、前者が登山者ファーストで道を作るために自然にインパクトを与える整備だとすれば、後者は登山者が自然に与えて広がった傷を修復する作業という感じで、別のベクトルを持っているからです。
一般的にはどちらも「登山道整備」と呼ばれることが多いのですが、その中でも、より自然に寄り添った整備の方向性・考え方・方法があるのだということを知ってもらえたら。
そして、自然に寄り添った作業が、結果的には美しい山の風景をつくり、それを登山者が享受することにもつながると考えています。

-三俣山荘インスタグラム投稿より引用-

 

道直しの一コマ。道直しに必要な砂利を集めて運搬している最中。

炎天下の作業の中PARAPACK / L-CAPが大活躍。※写真で着用しているのは旧カラー。

実際に作業を行った登山道のビフォーアフター。

自然のもの(もともと同じ山域にあったもの)を使用しできる限りナチュラルに道直しを行った。

 午前中は小屋付近の荒れてしまった登山道を修復。

できる限り人工的にならないように、近くに涸沢から足場になりそうな石を探し、まるでパズルのように組み立てて道を作っていく。

雨によってえぐられてしまった登山道の両サイドを補強し、歩きやすいように石で登山道を組む。

歩いてほしくない場所や、ストックをついてほしくない箇所には、あえて石を配置してダメージが広がらないように工夫している。

この僅か短い区間を道直しするのに大の大人が4人がかりで約4時間を要した。

道直しにはとんでもない労力と時間がかかることを身にしみて感じた。

昼食は三俣山荘名物のジビエ丼をいただく。

しっかりと煮込まれているため、ジビエ特有の臭みや硬さなどは一切なく見た目や味はまさに牛丼。つゆだくのご飯が疲れた身体に染み渡る。

午後の作業は、ヤシ繊維を格子状に編み込んだ源五郎ネットを使った道直し。

上の写真の様に、登山道の脇に石を積み上げてネットで固定した堤防のようなものを作る。

この堤防に雨などによって流れた土や小石、が徐々にたまっていき、えぐれてしまった登山道が徐々に元に戻っていくという仕組み。

ネット自体も化学繊維を使用していないので、時が経つにつれて朽ちていき最終的には土に還る。

この作業は即効性のあるものではなく、10年単位で登山道を自然の形に蘇らせていくという気の遠くなるような作業である。

 

今回、実際に道直しの活動をしてみて感じたことは、登山道を破壊するのは一瞬だが、

それを修復するのにはその何倍もの時間がかかるということ。

道直しプログラムを通して、自身の山の歩き方や今後の山との付き合い方も少し変わった気がした。

スタッフの方曰く、三俣山荘で行っている道直しプログラムは多くの人に道直しを広めたいという意義のもと、あえて参加ハードルを低くしているんだそう。興味がある方は三俣山荘を訪れた際に是非スタッフの方からお話を是非聞いてみて欲しい。

DAY4(三俣山荘-伊藤新道-湯俣山荘-高瀬ダム)

ラストフロンティア 伊藤新道を行く

時間を少し巻き戻し3日目の夜、、、

山小屋のスタッフに明日の天気を聞く高い確率で雨とのこと。

伊藤新道の起点となる湯俣山荘付近は、大荒れで雷を伴う警報級の雨が降っている、とのバッドニュースも同時に耳に入る。

仮に天候が良くても水量がどうなるか分からないということで、この時点では伊藤新道を使っての下山は絶望的な状況。

伊藤新道を歩くことは今回の旅の核心部であるだけに何としても歩きたい。

夜から雨が降り始めるとの予報に不安を覚えながらも、晴れ男(自称)の自分を信じてテントの中に潜り込む。

 

翌朝、4:30。

テントから外に出て天気を確かめてみると雨が降っていない!

見た限り三俣蓮華岳方面には雲もかかっておらず何とか天気は持ちそうだ。

小屋で詳細な天気と、伊藤新道の状況も湯俣山荘に聞いてもらう。

天気はお昼ごろまでは持ちそうで、伊藤新道の水量も問題なさそうとの事。

やった!憧れの伊藤新道を歩ける!今回の旅の中で最も安堵した瞬間であった。

今後は晴れ男を自称ではなく公言していこうと思う笑

 

※伊藤新道はあくまでもバリエーションルートである
※通行届の提出、ヘルメットの着用、パーティメンバーの体力、
緊急時の対応の把握等 、通常の登山とは異なる事前準備が必要となるので注意。

伊藤新道の手前には注意書きの立て看板が。

この夏は落石の影響でほぼすべての吊り橋が崩落しており、特に落石に要注意して進むようにと小屋のスタッフの方からも忠告を受けた。

 気を引き締めて足を進めていく。

三俣山荘から赤沢までの山区間は細い登山道をひたすら下っていく。

沢区間までの道は人の手こそ入ってはいるが急な斜面も多く、既に普通の登山道とは違う雰囲気を醸しだしている。

ちなみにこの日 伊藤新道を通行するのは三俣山荘側から私たちを除いた1人だけととの事

。伊藤新道をほぼ一人占めできるということでテンションもにわかに高まる。

伊藤新道 赤沢。

ここからが伊藤新道の核心部 沢歩きの区間が始まる。湯又山荘まで道らしい道もない沢を数えきれないほどの渡渉を繰り返し進んでいく。

ここから先は落石の危険もあるため安全のためヘルメットを装着。温泉成分が溶け込んだ川は湯又ブルーと言われる幻想的な表情。

硫黄の匂いが立ち込め、岩肌がむき出しになった道は自然の美しさと力強さを感じると同時に、私たちでは簡単に太刀打ちの出来ない怖さも感じた。

そんな景色に圧倒されながらもどんどんと歩を進めていく。ここから先は多くはあえて多く語らずに写真多めで少しでも雰囲気が伝わるようにお送りしたいと思う。

いつも歩いている登山道とは全く違う表情が姿を見せる。
これが伊藤新道か!と興奮が止まらない。

最初の渡渉ポイントにてテンション高まるT先輩。

右手奥には落石により通行不能となった第五吊り橋が見える。

崩落してしまった第五吊り橋付近で三俣山荘で握ってもらったおにぎりを食べてパワーチャージ。

野沢菜ふりかけと塩昆布ととろろ昆布のおにぎり。程よい塩味が◎

 沢の水は温泉成分を含んだ乳白色の明るい青色は通称〝湯俣ブルー〞と呼ばれている。

また、温泉成分が含まれた水は苔などの生物を寄せ付けないため、岩場で足が滑ることは殆どなくとても歩きやすい。

数多くの渡渉は足首くらいから深いところでは腰くらいまで様々。

バランスのとり方が難しく途中の渡渉ポイントでは足を滑らザックの半分が水に浸かるというアクシデントにも遭遇。

背負っていた【Hyperlite Mountain Gear】CONTOUR 35 の防水性の高さを図らずも実感した。

まるで違う惑星にいるかのような錯覚さえ覚える壮大な景色。

落石により通行不可となった第三吊り橋

同じく桟道も落石により崩落し通行不可に。

対岸に渡り深いして進んでいく。

この辺りから沢の両岸は今にも落石してきそうな岩がごろごろとしており、気がまったく抜けない。

伊藤新道の目玉ロケーションであるガンダム岩。

高巻きルートと岩の下をくぐる2つのルートがあるが、高巻きルートは落石が怖く、事故も多発している危険個所の為、安全を考慮して下から進む。

通常はこのガンダム岩のエリアが沢が最も深くなる渡渉ポイントで、場合によっては肩くらいまで高さになることもあるそう。

今年は夏の水不足の影響からか水位はかなり低く。比較的安全に進むことができた。

沢を下っていくと両岸に木々が見え始め、湯又ブルーと木々の緑のコントラストを楽しむことができる。

国天然記念物である噴湯丘(ふんとうきゅう)

 

【さいごに】

今回の旅は 雲ノ平でのんびりと小屋泊を楽しんだり、三俣山荘で道直しプロジェクトに参加したりと 縦走とは違った視点から北アルプスの自然を満喫できた3泊4日となった。

また、念願であった伊藤新道も天気が味方をしてくれたおかげで、無事に歩ききることができた。

まだまだ北アルプスは歩いていない場所も多いので、これからも時間を作って山歩きを楽しんでいきたいと思う。

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