《 岩手紀行 -急- 》いよいよ終着!八幡平を出発してブナの新緑が煌めく安比高原へ

【3日目】

早朝5時起床。本日も一日の始まりは濃霧。

昨日売店で買っておいたパンをかじり、眠い目を擦りながらパッキングを整える。

出発をする前に、おじいさんのタバコにつき合うことにした。

テラス席から濃霧の八幡沼眺めながらおじいさんはタバコを、ボクはお湯を沸かして本日のコーヒーをセットする。

多くの言葉を交わしたわけではないが、お互いタバコの煙とコーヒーの湯気をじっと見つめながら朝のひと時を満喫した。

この日の1杯は『タンザニア イユラAA ウォッシュト』.

この豆は、ライトローストの中でも格段に酸味が強いサッパリ系。

芳醇さは弱いけど後味のキレが良く、霧が濃い朝の目覚めの1杯にはピッタリだ。



午前6時、陵雲荘を発つ。

”次は紅葉の時期に三ッ石山荘にくるといい”とおじいさんから別れのひとこと。

そういえば昨日、三ッ石山荘で出会った自然保護官の女性も同じことを言っていた。

ここまで口をそろえて告げられると行ってみたくもなる。

これでまた、岩手を訪れる口実ができた。

最後におじいさんと握手を交わして小屋を後にする。



昨日の朝は濃霧&暴風、切り立った岩場の鬼ヶ城を行っていた。

今日は濃霧は濃霧でも、雨も風もなく鳥のさえずりが響きわたる湿地帯をゆっくりと進んでいく。

先が見えないほど重い霧が立ち込める湿原に、幻想的な雰囲気を感じながらの木道ハイクは非常に気持ちが落ち着く。

いつまでもこの中を歩いていたいものだ。

ひとまず目指す先は茶臼山荘。

当初の予定では、八幡平エリアを抜ける前に稜線沿いから分岐して安比岳、安比温泉を経由するつもりだったが、雪の状態やクマの出没を危惧して稜線コースに変更していた。

さっきも登場した三ッ石山荘で出会った八幡平市自然保護官の女性が教えてくれた情報をもとに昨日のうちに予定変更。

たしかに八幡平エリアを抜けて稜線らしい道を進むまでは、多くが残雪のセクションだった。

昨日の大深山以降の嫌な残雪が、ここは一局集中しているような場所。

この状況のなかで樹林帯に下っていたら、歩きづらさはいうまでもなく危険な状況も考えられたので良い判断だったと思う。

湿原の景色はここが最後だったと思う。

展望デッキや水場も近くにあって気持ちの良い場所。

ここまで残雪の足元に気を取られていて気が付かなかったが、すでに青空が広がっていた。

午前7時を回ったころ茶臼山荘に到着。

荷物をデポして目と鼻の先にある茶臼岳へ。

 

茶臼岳からの眺め。

今まで歩いてきた道を一望することができた。

ここに来て今日までの鬱憤を晴らすかのように、晴れ間を持ってくる自分を自画自賛しながらこの絶景をパシャパシャ写真に収める。

この大きなスケールの中を自分の足でコツコツ歩いてきたんだと実感する一番の瞬間。

歩いてきた道を実際に眺めて振り返る、この瞬間が堪らないんだな~これがまた。

満足いくまでしばし酔いしれたあと、小屋に戻ってご飯タイム。

出発前に食べた菓子パンだけじゃとても足りないので時間は朝食、気分は昼食でガッツリと食べに行く。

『山でこそ美味しいものを食べたいんだ!

まさにそんな気分の中、バッグの中から取り出したのはもちろん

MOUNTAIN GOURMET LAB.】の山飯。

今回は、ライムと筍のグリーンカレーをチョイス。

悪天候&悪路を進むことが多かった今回のトレイル。

その最終盤に出会った、これまでを帳消しにするかのような絶景を目の前にして食べる山飯として、このライムと筍のグリーンカレーのチョイスは完璧だった。

丸2日以上、動き続ける体にグリーンカレーのスパイスが染み渡る。

さらに清々しいまでに晴れ渡った空とライムの爽やかさがニクいほどマッチしている。

気が付けばあっという間に完食。ものすごい満足感が押し寄せてくる。

ごちそうさまでした。

身も心もリフレッシュして茶臼山荘を出発。

 

エンディングに向けてもうひと頑張り。

安比高原の核心部に向かっていくにつれて次第に周囲が緑に覆われていく。

風が抜けて気持ちの良い樹林帯ハイクが始まった。

しかし、ここから人里に下りるまで”ヤツ”の気配をビシビシ感じながら歩くこととなる。

実は、安比高原エリアで計4つの”クマの糞”を発見。

昨日、八幡平手前の登山道脇で1つ見ていたが、安比高原では4つ。

3日間で合計5つのクマの糞と出会っている。

事前情報通りだが、実際に高頻度でクマの痕跡を見てしまうと緊張が走る。

周囲の物音に敏感になりながら、鈴を鳴らし時おり奇声を上げながら進む。

今回のトレイルを通して、出会った登山者は2人

三ッ石山荘での自然保護官の女性と、陵雲荘でのおじいさんのみ。

八幡平の観光客や施設スタッフ、焼走りで出会ったハンスご夫婦を入れてやっと10名程度。

八幡平を除けば、人よりクマの糞の方が多く出会っていることになる。。

 

クマの気配に怯えながら正真正銘最後のピークである前森山に到着。

ここは安比高原スキー場の頂上でもあり、どうやらゴンドラでも来れるようだ。

一昨日登った岩手山が目の前に鎮座する。

一帯は公園のようになっていて、山頂にはブランコや展望デッキ、ゴンドラ駅の方まで下ると滑り台などの遊具があるのが見えた。

一年を通して、冬はウィンタースポーツで賑わい、他の季節はゴンドラを利用して観光に来る需要があるのだろう。

ボクはもちろん最後まで歩きを貫くスタイル。

スキー場の敷地内が登山道になっていて、普段は滑る斜面を歩いて下っていく。

前森山から目指すは、【 岩手山・八幡平・安比高原50kmトレイル 】のゴールとなる”安比高原ブナの駅”。

ラストスパートは美しいブナ林。

終始、新緑の輝くブナ林に目を奪われて索敵を怠り、クマの警戒を忘れてしまうほど。

見上げるとブナの枝葉の隙間から差し込む日差しがこれまた良い感じ。

路面も歩きやすく軽快に足が進んで予定よりも大幅に巻いてゴール地点へ。

午前11:30、安比高原ブナの駅に無事到着。

ひとまずこれにて今回のトレイルはゴールとなる。

三ッ石山荘で出会った自然保護官のお話やクマの糞の状況を情報交換すべくスタッフの方に声をかける。

クマの出没に関しては概ね例年通りとのことだった。

6月に入るまでは八幡平以外のエリアは登山者が人が極端に少ないのでクマも自由に行動できる状況下だったそうだ。

どこでエンカウントしていてもおかしくなかった状況なだけに、まずは無事を感謝した。

ここから車道をひたすら下れば最終目的地のJR花輪線「安比高原駅」に到着するのだが、まずは温泉で汗を流したくて「安比温泉 白樺の湯」へ向かうことに。

温泉までの道をショートカットできる高原内のルートがあるのことを、紙地図を見て発見。

これが最後の最後に悲劇?を生む。

地図上ではブナ林の道を少し折り返して分岐した道を進んでいくことになっていて、”ブナ林が美しい”という一言も添えられていた。

それが甘い誘い文句だった。

実際に分岐の先はとても美しいブナ林の中を行く道で、地図が言うことは間違っていなかった。

ただあまり踏まれていない道で草木が鬱蒼と生い茂り、高低差も無い道のため見通しが悪かった。

ダメだ、雰囲気がありすぎる。いかん、怖すぎる。

クマの気配しかない。

いや、おそらく空間の雰囲気と恐怖心、不安感からそうとしか思えなかったんだと思う。

霊感が無くたって廃墟や夜の病院が薄気味悪いように思う、あの感じだ。

可能な限りの早歩きと奇声。

バッグに付けていたクマ鈴を手に持ち替えてブン回しながら先を急ぐ。

この区間が3日間で一番長くて感じて、生きた心地がしなかった。

幸いにも周囲で獣の物音がするなど決定的な場面はなく、無事に人里に降りることができた。

安堵したところで、安比温泉白樺の湯に到着。

3日間歩いた体、クマに敏感になっていた心に、このソフトクリームの幟は卑怯だろう。。

温泉をしっかり堪能して、しっかりソフトクリームをいただいた。

汗を流して駅へ向かう田舎道。

道端や田畑の草刈りをしているおじさんやお兄さんがボクの格好を見て声をかけてくれた。

岩手山から歩いてきたというと、どちらもかなりビックリしていた。

今回歩いた【 岩手山・八幡平・安比高原50kmトレイル 】は、まだまだ地域にも浸透していないのかもしれない。

15時、安比高原駅に到着。

15:31分の盛岡行きに乗車する計画で、本当は入浴の時間を入れていなかった。

かなり大きく巻いたことでゆっくり温泉に浸かってソフトクリームを食べて、道中のローソンでコーヒーを飲んでも余裕のある到着となった。

ちなみに、JR花輪線は電車の本数が少ないので計画時は注意が必要。

15:31発を逃すと次は19:39分、、

ローソンで4時間もの時間を潰すことになりかねないのでくれぐれもご注意を。

ここで電車を待つ間に、今回泥に雪にまみれながら大活躍した白いギアたちをご紹介。

まずは昨年からの相棒《 アンバウンド40

HMGはブラックを選ぶ”汚したくない派”と、ホワイトを選ぶ”汚して味と言い張りたい派”に分かれるブランドだと個人的に思っている。

ボクは見て分かるように断然、汚して味と言い張りたい派っ!

今回の3日間のトレイルを経て、より良い味が刻まれたアンバウンド40。

どんどん男前になってきてる。

愛着が湧く一方だ。良い面してるぜ。

今回は内部のアルミステーとウエストベルトを取っ払ってミニマムスタイルで使用。

クローズドセルのマットを内包して使用する場合、アルミステーの形状がパッキングの効率を邪魔する場合が多い。

だから今回に限らず、ボクは基本的にステーは抜いて使っている。

腰ベルトもよほど水や食料などの質量があるものを多く詰め込まないといけない山行を除いて装着していない。

最近は小物もホワイトで統一。”白には白を”が大田的オススメ◎

HMG / SHOULDER POCKET

HMG / VERSA

◎ローンピーク7

歩きやすさは言わずもがな。

もしかすると履く人によっては、かかとの甘さ(自由度が高すぎる)が気になるかもしれないが、ボクはこの開放感が好みで過去モデルから幾度か買い替えて履き続けている。

非常に軽くて歩きやすいし、アルトラ特有のつま先部分が広いフットシェイプのおかげで足の指を適切に動かしやすい。

全方向、路面状況に問わず有効なグリップ力も魅力的なバランスの取れた一足。

 

今回のトレイルで、白基調が目を引くお気に入りのローンピーク7も泥だらけになってしまった。

といっても、もう何度も泥だらけにしてはオキシに漬けて漂白してを繰り返しているんだが。

最近はいよいよ汚れが落ち切らなくなってきた。

ソール減りもそろそろ限界かもしれない。

まぁこれまでたくさん一緒に歩いてきたからね、仕方ないことだ。

今回もひとまずはお疲れ様という気持ちを込めて漂白してみたが、やはり汚れが落ち切らなかった。

でも、ソールはまだなんとか持ちそう。

この夏、いけるところまで履き倒したいと思う。

現在バンブーシュートでは、ローンピーク7からさらなるアップデートが加わった《 ローンピーク8 》を取り扱い中。

詳しい使用感から、フィッティングまで何でもお任せを◎

スタッフ坂本が実際に着用して歩いた際のレビューも残しているので、こちらもぜひ読んでみてほしい。

《ALTRA LONE PEAK8》160km使用レビュー

そうしているうちに定刻。

無事電車に乗り込み盛岡への帰路につく。

車窓からは岩手山が雲を被らずくっきりと姿を見せてくれていた。

その姿はまるで、晴れている時にまた来いよって見送ってくれているようだった。

ありがとう岩手山。

ありがとう八幡平。

ありがとう安比高原。

おかげで最高のトレイルを歩くことができました。

そして3編に渡り目を通して下さった皆さま。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

この夏から秋にかけてのハイキングハイシーズンに、どこを歩こうか悩んでいる方は是非【裏岩手縦走路】【岩手山・八幡平・安比高原50kmトレイル】を候補にあげてみてください!

宿泊場所、装備、アクセスなどなど、行程のアレコレで気になったことがあれば、いつもで聞いてくださいね!

ぜひ相談に乗らせていただきます◎

それでは。

大田

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