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【祖母・傾・大崩縦走】九州最長の縦走路を歩く
こんにちは、BAMBOO SHOOTSスタッフの坂本です。
今回は、九州山地に位置する日本百名山”祖母山”から”大崩山”まで、テント泊縦走してきました。このコースは、一般登山道として”九州最長の縦走路”とも言われています。
九州の山と言えば、阿蘇、九重、霧島、雲仙等の火山が先ず思い浮ぶと思います。私も九州にいた頃はこれらの山ばかり登っていました。一方、祖母山は百名山の中では存在感が薄くアクセスも悪い、百名山完登を目指している方でなければ、関東から遠征する登山者は少ないように思います。しかし、九州のどの山から見ても長大でよく目立つ九州山地の山々は、私の中でずっと気になる存在でした。
人を寄せ付けない奥深い峰、手付かずの原生林、傾から大崩間に至っては歩く人が少ないが故、野趣溢れるルート…人の多い山で長年小屋番をしていた私にとって、神秘性すら帯びるこの山域は知れば知るほど魅力的で、思い立って歩いてきました。今回はそんな山行の記録となっています。
よろしければ最後までお付き合いください。
〈ルートログ〉
※スーパー地形より引用
祖母山へ行くにあたり、悩んだことはそのアクセスの悪さでした。祖母から北へ稜線を辿っていくと、最終的に越敷岳というピークにぶつかる、その登山口までは駅から10kmなので歩けば良いとして、下山口の祝子川は数年前にバスが廃線になっています。個人的に乗ってみたかった秘境路線バスなので残念…最終的に延岡まで車道を30km歩くつもりで出発しました。
朝の飛行機で熊本空港に降り立ち、豊肥線を乗り継いで大分方面へ向う。揺れる車内から視線を外に向けると雄大な阿蘇山がよく見えた。越敷岳最寄駅の豊後荻駅で下車し、今回のトレイルがスタートです。
電車を降りたら先ず郵便局へ立ち寄り、あらかじめ送っておいた荷物を受け取りました。飛行機に乗せられないペグやストーブを回収して再びパッキング。長閑な山村風景に和みながら、登山口を目指して歩きだす…
今回選んだザックは、Hyperlite Mountain Gear「CONTOUR 35」ボトムポケット付きのザックを試したことがなかったので使用してみることに。ザックの詳細はスタッフ黒田のレビューを参考にどうぞ。
WAYPOINTとの比較通り、CONTOURの方がサイドポケットが深くて収納力がある反面、背負ったままのアクセスが少々し辛い。そんな時、ボトムポケットがあることで、地図や日焼け止め等をすぐに取り出すことができます。幅広なショルダーベルトはWAYPOINT同様で背負い心地は抜群、アルミステーとウエストベルトが省かれているので、既にギアの軽量化が進んで重量を背負わない方はCONTOURがオススメです。
〈1日目〉
駅から2時間程歩き、登山口に着いた時点で既に16時、ここから登山道を登り始めます。歩いたのは11月中旬で、この時期の九州は17時半で真っ暗に。なので早々に稜線まで上がってテントを張りたい…
稜線に出てから地形図を頼りにフラットな場所を探した。今回は歩く日程の中で雨予報の日があるので、耐候性が高くて室内空間の広いSix Moon Designs 「Deschutes Plus Tarp」を選びました。サッと幕を張って軽めの夕食を済ませます。
11月になっても気温の高い日が続いていますが、1000mを越える場所は吐く息も白く肌寒い。早々にシュラフに潜り込んで眠りに就きました。
〈2日目〉
2日目は暗い時間からヘッデンを付けてスタート。この日は降水確率40%の曇り予報、雨が降らないだけ御の字かと思いながら歩き始めた。
祖母山9合目には通称Q合目避難小屋があります、ここで朝食がてら休憩させていただきました。
祖母山避難小屋は元々有人の営業小屋でしたが、現在は避難小屋として開放されています。なので、水場、トイレ、薪ストーブ、布団、本、ソーラーによる電気の供給ありと非常にデラックスな避難小屋。Bluetoothスピーカーも置いてあり、スマホと繋いで音楽を流して優雅な朝食タイム。
コーヒーを淹れてまったりした後、小屋の裏の水場で水を補給してから出発。この先はずっと稜線で水場が少ないエリアです、祖母から大崩まで繋げる場合は、容量の大きいウォーターキャリーや浄水器が必須だと思います。
避難小屋から山頂へ登って行くとガスが抜けそうな予感。
天気には全く期待していませんでしたがこれは高まります…そしてついに…!
山頂は見事に雲を抜けていました。九州山地の最高峰である1756mの頂、その目線から近い位置に雲海が広がっていてより壮大な雰囲気です。先に山頂にいた方と話すと、今ちょうど晴れたらしく素晴らしいタイミング。北西方面はスカッと晴れていて、九重連山がよく見えました。
朝はまだ肌寒く、Mountain Hard Wear「Air Mesh Hoody」を上に着ていましたが、日中は気温が上がり、山と道「DF Mesh Merino Long Sleeve」を一枚で使用。3日目は雨の中行動することになりましたが、このレイヤリングは雨具の中でも蒸れ知らずで快適でした◎
祖母山から障子岳方面へ一気に梯子で降りていく、雲海より下は終日どんよりしていました。標高1500mから下は僅かながら楓や橅の紅葉が残っていた。
今回のおよそ70kmに及ぶ縦走路、最後まで殆ど植林の無い樹林帯で、植生の豊かさに驚かされ、樹種の同定に飽くことがなかった。森林限界の稜線とはまた違った魅力があります。
祖母山から傾山まで心地よいアップダウンが続く、良く踏まれた縦走路。植生と雰囲気が似ていて、大峯奥駆道や果無山脈を彷彿とさせます。
翌日が雨予報なこともあり、九折越峠の避難小屋に泊まる予定でしたが、その先の広場の開放感が気持ちよく、結局テントを張ってこの日の行動を終えました。
〈3日目〉
この日も暗いうちから歩き始める。暫くガスっていましたが、ここでも傾山頂付近で抜けてくれて、雲海が滝雲となって稜線を越えていく瞬間を捉えることができた。
深田久弥が”品格の山”として百名山に加えたのも納得で、歩いてきた稜線の先で祖母山は確かな存在感を放っています。
そして、傾山から杉ヶ越への分岐、ここからが今回の縦走の核心部。この先は大崩山を下山するまでコースタイム20時間の間に水場がなく、 道は不明瞭、破線ルートの岩場、藪漕ぎ…しかも今回歩くタイミングでドンピシャの雨。
大崩を過ぎるまで当たり前のように人と会うことはなく、精神的にも疲弊する孤独な山行となりました。その分、奥地の雰囲気が濃く漂う素晴らしいルートであることに間違いありません。
分岐を進むと一気に激降り、道が不明瞭な部分が多く、そこに岩場の昇降が混ざって予想以上に時間がかかる。落ち葉の堆積したこの時期は余計に分かり難く、ピンクテープが取れてる箇所も多いので、ルートファインディング能力が必要となってきます。
雨で岩が濡れる前に難所を通過したいと思いながらも、視界が開けると大崩方面の山並みが美しく、つい時間を忘れて休憩してしまいました。
ここまで菌類はヌメリスギタケモドキやツキヨタケを多く目にしていましたが、途中で状態の良いヤマブシタケを発見。見るのも触るのも食べるのも大好きなきのこでテンションが上がります。近年はスーパーでも見かけるようになりましたね。採取したい気持ちを抑え、今回は一人観察会、写真に収めて我慢します。
新百姓山を過ぎて難所に差し掛かる前に雨が降りだした。明日の朝まで止まない予報で、大人しく雨具を着てザックへカメラをしまう。この先から破線ルートで難所が連続する区間となる、大鋸・小鋸意外にも、濡れると滑る際どい岩場、垂直に近い鎖場、心許なく連結された梯子等が多く緊張を強いられる。今回使って引退させようとしていたソールの摩耗したシューズで来たことを後悔しました…
雨脚は強まる一方で写真を撮る余裕もなく、実際に歩いた時間以上に長く感じる一日となりました。
夏木山を過ぎれば岩場はなく、落ち着いて歩ける道に。とはいえこの先も登山道が不明瞭な破線ルート、危険箇所こそ無いものの、踏み跡が無く、雨で視界の悪い広尾根は道迷いの心配がある。逆に言えばなだらかな地形で野営適地は沢山ありました。この日も日没まで歩き、鞍部のフラットな場所にテントを張った。
今回はレインスカートで歩いていたので膝から下はびしょびしょに、そのままシュラフに入るのは憚られるので、 凌の「カルフワタオル」を足に巻き、上に着ていた「Air Mesh Hoody」へ下半身を突っ込んで寝ました。Octaを二枚重ねると一気に水分が吸い上げられて足元はドライに、何より毛布に包まれてるみたいで気持ちいいんですよね。
〈4日目〉
縦走最終日、朝4時頃まで幕を叩く雨音が聞こえていましたが、ここから天候が回復していく予報。お湯を沸かしてコーヒーを淹れて、ゆっくり出発。
晴れていく霧と朝の光がなんとも美しい。濡れた落ち葉から立つ香り、澄んだ空気を胸いっぱい吸い込んで走り出したくなる朝でした。実際にはカメラのシャッターを押す手が止まらず、ペースは控えめ。
鹿納山周辺から見える日隠山がとにかくカッコいい。地形図を見て、今歩いている稜線から繋げられそう…なんて考えるのが楽しいのです。 山を歩く度に登りたい山が増えていきます。
鹿納坊主は見た目通りの険しい山で、まだ濡れていて滑る岩場や脆い地面のトラバースを慎重に進みました。今回歩いた中で、傾山から大崩山までアセビが非常に多かった。九州山地はとにかく鹿が沢山いて、森林はかなり酷い食害を受けている印象でした。場所によっては下草が殆どなく、表土が雨に流されている様な箇所が多い。そんな中で、強い毒を持つアセビは鹿に食べられることなく繁茂しているのだと思われます。
背丈以上に伸びたアセビの藪を漕ぐことが多く、アルファダイレクト系のインサレーションを着ていたらズタボロになっていたでしょう。Octa製の「Air Mesh Hoody」は表面の引っ掛かりが少なくて不安がなかった。葉っぱ等のゴミが付き難い点も、私がAlphaやActiveよりOctaを推す理由です。 Alphaの抜けのよさや見た目は好きなんですけどね。
この日は下山したら登山口の避難小屋か下のキャンプ場に泊まり、翌日半日かけて延岡まで30km歩く予定。天気は4日間で一番良く、早く降りるのも名残惜しいので湿気たシュラフを乾かしながらのんびり歩いた。
この山域は度重なる台風の直撃によって倒木も非常に多い。この写真もルート上なので、倒木を潜ったり越えたりしながら進んでいく。
そしてこちらが、”日本二百名山”、”九州最後の秘境”、”九州最難関の山”…と色んな肩書を持つ大崩山からの景色。花崗岩から成る岩山で、風貌は瑞牆山にどことなく似ています。山頂は落ち着いた印象の樹林帯なのですが、涌塚や坊主尾根へ進むと様子は一変します。大展望の岩尾根を鎖や梯子で降りていくのは、個人的に剱岳や妙義山よりもスリルがあるなと感じました。長い距離を歩いてきた後のご褒美のような景色に息を呑む。思えば祖母山、傾山、大崩山はそれぞれ百名山、三百名山、二百名山であり、今回歩いてきた主要ピーク全てで景色を堪能できたのは、この天候の中ではかなり運が良くタイミングがバッチリでした。
そんな運の良さを象徴する様な出会いが…
2日目以降全く人に会いませんでしたが、大崩からの降りで1組のパーティに出会いました。その内2名がガイドさんで、私がずっと長く繋げて歩きたいと計画している九州脊梁山地の地図を作っている方々でした。そして、下山後は街まで歩く予定が車に乗せていただくことに…
車内では情報の少ない脊梁山地のマイナーな尾根のこと、おすすめの時期やルート、脊梁愛を沢山聞けて、これから私が九州脊梁山地へ通うことが決定した瞬間でした。本当にありがとうございます。
ガイドさんに「先降りたら登山口で待っててよ~!」と言っていただきスタスタ岩場を降りていきます。大崩山の名所”象岩のトラバース”は切れ落ちた崖を横切っていく、鎖を持って足の置き場を意識して進めばなんてことないですが、ここが濡れていたら相当怖いと思います。この日も雨じゃなくて良かった…
スリル満点の岩場を1時間降っていくと、そこからは樹林帯に。上部一帯はツガや五葉松の生えた、花崗岩の明るい岩稜帯でアルペンムード満載ですが、樹林帯はカシ等の照葉樹にヒメシャラが混じる鬱蒼とした南方の森の雰囲気。このギャップが面白く、同時に九州山地の植生の豊かさに改めて感動を覚えました。
最後の祝子川の渡渉では、膝までの深さの川を渡っていきます。水は非常に冷たくて透明で、4日間の汚れを洗うようにザブザブ渡った。靴とパンツを軽く絞って駐車場まで更に30分歩くのですが、ガイドさんの車を濡らさないようにする心配も、高い速乾性を誇る山と道「DW 5-Pocket Pants」の前では杞憂となった。
延岡市街地まで送っていただき、訪れたのは一軒の銭湯。番台スタイルの古い銭湯としては宮崎県内最後の銭湯で、全国の渋い銭湯を巡っている私にとってもまだ入っていない最後の銭湯。今回の山行の為ずっと入らずにいたので、4日ぶりのお風呂で憧れの”喜楽湯”に浸かった瞬間は生涯忘れないでしょう…
〈終わりに〉
4日間の縦走で汚れたCONTOUR。雨に濡れ、泥に汚れ、藪を漕ぎ、岩や木々に擦れまくって味わい深い見た目に。汚れたDCHもカッコいいですが、店頭で「汚れは落とせますか?」といった質問が多いのもまた事実。白は映えるカラーですが、同時に汚れが目立ってしまうので、気になる気持ちも分かります。今回はせっかくなので汚れの落ち具合を検証してみました。
下山後は数日宮崎に滞在して、洗ったのは帰宅してその翌日。泥は完全に乾き、汚れが定着してしまったものだと思われました。
お風呂場のシャワーで軽く流し、普段の洗剤に使っているウタマ〇リキッドを柔らかいスポンジに付けて擦ってみると…個人的には気にならないレベルまで汚れを落とすことができました。DCHは特性として紫外線にも加水分解にも強い素材だとされていますが、水気をふき取って陰干しするのがベターでしょう。
Hyperlite Mountain Gearの白いザックをお持ちの方は是非参考にしてみてください。意外と時間が経ってしまった汚れも落とすことができますよ。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
坂本
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