BAMBOO SHOOTS MOUNTAIN JOURNEY vol.28

シノギングで  “足るを知る”  を学ぶ


 

  

最近、山登りやランだけでなくロゲイニングにもハマっていて地図読みに興味津々なバンブーシュートディレクターの甲斐。今回は甲斐がシノギングイベントに参加してきた様子をレポートします。

シノギングとは、ざっくり言ってしまうと、地形図上の目印をつけたポイントまで自分でルートを考えて、地形図とコンパスだけを頼りに目的地を目指すという山歩き。

果たして甲斐は、無事シノラー(シノギングをする人の意らしいです!)になれるのでしょうか!?

 

 

 


高尾駅に集合すると、アクシーズクインでシノギを担当する柳谷さんが出迎えてくれます。彼は、10年以上のシノギング歴を持つ達人級のシノラー。その隣には低山小道具研究家として、低山を遊び尽くしている森勝さん。なんとも豪華な布陣です。

そこで、おもむろに地形図が配られます。見ると、高尾近辺の地形図。まずは、そこに記された神社まで、さっそく地図とコンパスを使って歩き出します。

いつも街歩きではGoogleマップに頼りっきりの身からすると、この時点ですでに新鮮です。

 

 

「すぐには歩き出さないのがシノギングイベントの特徴なんです」

柳谷さんが神社の前の空き地でにこやかに宣言します。シノギングの説明から始まり、凌ブランドのアイテムを丁寧に説明してくれます。

「凌のコンセプトとしては、自然に対して完璧なプロテクションを確保するのではなく、八分目くらい、というものがあります。残りの二分は、自分の経験と知識で補っていくという考え方です。それに加えて、日本に古くからある衣服の優れた点を再発掘するというのも凌の特徴です」

 

 

凌を象徴するアイテムである「ツユハラヒ」は、いわゆる前掛け型のレインスカート。レインパンツを履くことによる暑苦しさから解放され、着脱もしやすい。これとゲイターを組み合わせるだけでも、かなり雨は防げると言います。

 

 

「タビガラス」は、木枯らし紋次郎スタイルの道中合羽。パッと見は1枚の防水透湿シートですが、スナップボタンで留めることができ、体だけでなくバックパックも覆えてしまいます。もちろん、通気性は抜群。ただの布という形状もグランドシートにしたり汎用性が高そうです。

 

 

「最終的に、どんどん布になっていくんですよね」と笑う柳谷さんですが、“足るを知る”が詰まった、シンプルで良い道具ばかりです。森林限界以下で使う前提であれば、十分なプロテクションが得られると同時に、通気性などを考えるとガチガチにプロテクションするよりも心地良く山歩きを楽しめるはずです。

 

 

個人的に気になったのは「ナツノフンドシ」。そう、褌です。本体(?)の布部分はウール混のメッシュで、腰紐はウール100%。特に夏場は、アンダーウェアが窮屈に感じることが多かったので、それを解消する画期的なアイテム。トレイルランなんかで履いても擦れなど少なそうで快適そうです。柳谷さんは日常使いもする褌愛用者とのことで、もうパンツには戻れない魅力があるそうです。さすがにコチラのアイテムの装着例のお披露目はなかったですが(笑)。

 

 

甲斐は、脚絆型のロングゲイター「クナイ」を装着。シノギングでは登山道ではなく自分で決めた道を歩くワケですから、時には藪漕ぎをするシーンなども出てきます。そういうときに足元をしっかり守ってくれるアイテム。朝露なども防いでくれるので、シノギングでは常に装着必須です。

 

 

 

続いて、森勝さんから地形図の見方とコンパスの使い方のレクチャー。これがまた分かりやすい! 熟練者だからこその無駄を排除した教え方なので、アレやコレやと知識を詰め込む必要はありません。「コレだったら、自分でもできそう」という、良い案配なんです。

 

ここで、今日の目的地を設定するんですが、まず地形図を見ながら休憩するのに良さそうなフラットな場所を探し、そこへ至るためにはどういうルートをとると良いのか。そういうことをみんなで考えていく。細々教えるのではなく、基本的に参加者に任せてくれるスタイルで、現場力が身につくイベント。

 


 

 

さて、全員シノギスタイルになったらいよいよ山に入って行きますが、いきなり最初の分岐がわかりにくい! ほとんど獣道のようなところを入って行き、尾根に取り付いていきます。尾根上まではなかなかの急登。そんな時に活躍してくれたのが「凌ピッケル」。通常のピッケルよりも短めに設定してあって取り回しもしやすいし、ブレードの幅が広いので、柔らかい土などでもよく効きます。

 

 

尾根に上がってしまえば、適度なアップダウンの心地良い稜線歩きです。でも、油断大敵。道なき道を進んで行くワケですから、つねに地形図とコンパスが示す方角を確認して、自分の位置を推測しながら進んでいかないと、あっという間に道に迷ってしまいます。ここからは、参加者の中でリーダーを交代しながら、その人の判断に従って進んで行くことになります。リーダー、責任重大……。

 

 

こうした登山道が明瞭でない山道を歩く上で、重要になってくるのが、尾根を見逃さないということ。今回は基本的に尾根伝いで目的地まで到達できるんですが、分岐には当然、案内看板などはありません。次にどちらの尾根に行くのかしっかりチェックし、その方向を常に確認しながら、歩いて行きます。

 

とうぜん歩みはゆっくりになりますが、普段の山歩きよりも周囲に注意を向けるので、美しい新緑や風のざわめき、鳥の声などが、よりクリアになっていく感覚があります。

そして、いよいよ甲斐がリーダーのターンがやってきました。途中までは調子良かったんですが、最後の尾根を見つけられず、来た道をちょっと戻ることに。

「ちょっと迷うくらいが学びがあって良いんですよ」と柳谷さん。

進むことに夢中になりすぎると、どうしても歩きやすい道を選びがちですし、周囲に目を配ることがおろそかになります。ここは注意したいところです。

 

 

無事に最後の尾根に乗ることができて、しばらく進むと突然真っ平なエリアに! そう、ここが今日の目的地であり、ある意味本番のスタートです。シノギングでの休憩時間は最短でも2時間。ここでハンモックを張ってのまったりタイムなのです。ハンモックを張る際の木の選び方や注意点など、柳谷さんの丁寧なレクチャーの後、それぞれハンモックを張っていきます。

 

 

 

 

そして待ちに待った、森勝学校開校です!

「小学校はアウトドア」というテーマなんですが、滑車の原理、蝶々結び、ロウソクの内縁外縁の温度差、結露実験、彫刻刀での版画作りなどなど、実は小学校で習ったことを応用すれば、アウトドアで困ることはまずないということを学びます。つまり簡単なんですが超役に立つ知識を、シノギングでは得ることができるんです。

ネタバレを含んでしまうので、ここでは詳しくは触れませんが、アウトドア上級者でも目からウロコ間違いなしの内容。

ぜひシノギングイベントに参加して体感してみてください!

 

 

 

心地良い風に吹かれながら、ハンモックに揺られてそれぞれ思い思いの時間を過ごします。昼食をゆっくり作っても良いし、眠ったって良い。甲斐はウッドストーブで起こした火でお湯を沸かし、コーヒーを淹れています。

「このイベントで、ブランドのコンセプトをしっかり表現できているのがすごいですね。フワッとした感じがひとつもない」とすっかりシノギングにハマった様子。

 

 

通常登山ではなかなか経験できないたっぷりの休み時間。昔、知り合いのガイドさんが言っていた「山を急ぎ足で歩くのって、美術館を駆け足でまわるようなもの」という言葉を思い出します。

最終的に歩いた距離的には約6kmとそこまで長いものではありませんが、達成感や充実感はいままでの登山では感じたことがないほどです。そして山の見え方が変わる経験でした。

これまで何気なく見ていた無数の尾根が「どうやったらあそこを取り付けるか」「地形図のこのポイントにはどうやったら辿り着けるか」といった思考に変わります。

 

 

高尾駅に戻り、みんなで感想などを語りシノギングイベントは終了。柳谷さんと森勝さんからの言葉で締めたいと思います。

 

「シノギは美学です。いつなんどきもあたふたせず、まごまごせず

自分の道具を綺麗にしっかり使いこなす。難しいことをやる必要はなくて、基本を積み重ねることが大切です(柳谷さん)」

 

「みなさん、小学生に戻れたでしょうか? これが、僕がずっとアウトドアでやってきたことです。その根底にあるのはWHOLE EARTH CATALOGという本に出てくる最小のもので最大の効果をという言葉です(森勝さん)」

 

情報が溢れきってしまって、近道的に正解ばかりを追い求めてしまう現代において、このシノギという考え方からは、いろんな学びがありました。自分で考え、自分で解決していく。そんな生き物としての根本を思い出させてくれる素敵すぎるイベントでした。

とりあえず、フンドシ買います!

 

※シノギングイベントに興味がある方は、是非以下のHPをチェックしてみてください!

https://shinogi.axesquin.co.jp/

 

 

Text/Takashi Sakurai