【HMG DAYBREAK レビュー】2泊3日の古道歩き 六十里越街道から月山へ〈前編〉
こんにちは、BAMBOO SHOOTSスタッフの坂本です。
そのデザイン性と汎用性の高さから当店でも反響の多いザックの一つ、Hyperlite Mountain Gear【Daybreak】
Daybreakを目当てに来店される方や、初めて実物に触れる方の多くが、「思っていたより大きい」との感想を仰います。それもその筈で、17L(外部ポケット込み23L )という容量ながら高さが53cm横幅は28cmあり、かく言う私も初めて手にした時は皆様と同じ印象を受けました。
そして、実際にテント泊装備をパッキングしてみると、やはり数値以上の収納力を実感することに・・・
今回は、そんな”夜明け”の名を冠するザックを2泊3日の山歩きで使用してきたので、その山行の様子とDaybreakの使用感をここに記したいと思います。
やや長尺となりなすが、よろしければお付き合いください。
Hyperlite Mountain Gear【DAYBREAK17】
…店頭での勤務終了後、同行者と駅で合流して夜行バスに乗り込んだ。熟睡とは言えないが車内で程々に身体を休めることができ、気がつくと窓の外には黄金色に染まる庄内平野の田園風景が広がっている。人もまばらな朝の5時、山形県の鶴岡駅でバスを降りた私たちは、コンビニで朝食を済ませて遠くに聳える月山を目指して歩きだした・・・
今回歩くのは、約1200年前に開かれた出羽の古道”六十里越街道”。
海に面した庄内平野と内陸の山形市を結ぶ険しい山岳道は、内陸に塩を運ぶための物資輸送道路として。また、湯殿山と月山への参拝道として生まれたとも伝えられています。
新道開通により廃れたものの、古道としての名残を今も残す。そんな六十里越街道を経て、鶴岡駅から湯殿まで歩き、月山を越え、肘折温泉までを繋ぎます。山形の自然、文化、信仰を体感できるロングルート。
※今回歩いたルートのGPSログ
時系列が前後しますが、今回の山行のパッキングについて。
9月の東北地方を3日間歩く装備は下記の通りです。
1.着替え、手ぬぐい/2.食料3日分+非常食0.5日分/3.ポンチョタープ、フットプリント/4.トレッキングポール/5.水筒、浄水器/6.モバイルバッテリー、ヘッドライト等/7.歯ブラシ、除菌シート、日焼け止め等/8.ペグ、ガイライン/9.クッカーセット、コーヒー等/10.シュラフ/11.エアマット/12.ファーストエイド/13.地図/14.晴雨兼用傘/15.ファニーパック/16.シュラフカバー ※水、食料、燃料(アルコール)を抜いたベースウェイト3.4kg
テントと雨具がポンチョタープに集約されているのもあり、上記一式詰め込んでみても容量の9割といった感じ。余裕を持ってパッキングすることができました。
私はシュラフを専用のスタッフサックに詰め込まず、ザックに直入れすることが多いです。なによりタイトなスタッフサックに復元力の高いシュラフをギチギチに詰め込むのは大変だし、ザックの中で可変する余地があった方が結果的にデッドスペースを埋めてコンパクトなパッキングに収まります。
Daybreakはパネルローディングなので、ザックの下部までガバッとジッパーで開く仕様になっています。メインコンパートメントへのアクセスがしやすい反面、シュラフを直入れするとジッパーで薄いナイロンを噛んで穴が開く危険性があります。今回はシュラフの保護も意図し、あくまで”ザックの中で自由に形を変えられる大きさ”のメッシュスタッフサックに詰めました。SEA TO SUMMITのウルトラメッシュスタッフサックは20Lで17gと非常に軽量。まだ残暑のタープ泊ということもあり、シュラフを取り出した後のメッシュサックは就寝時にそのままバグネットとして使用。
さらには、朝起きて湿気たシュラフをネットに入れて外付けして歩けばある程度乾燥するし、下山後の宿では洗濯ネットとしても活用しました。 ※バグネットや洗濯ネットとしての使用は、メーカーの想定外。あくまでULマインドな自己責任での使用方法です。
内部には日常使いを意識してノートパソコンを収納できるスリーブや、鍵や手帳が入る程度のポケットがあります。シンプルな1気室のULザックに慣れている身からすると、こういったポケットは小物類がザック内で迷子になることなく当たり前に使いやすいですよね。
パネルローディングの利便性を妨げないよう、サイドストラップは付いていません。なので、サイドポケットに長物を収納して固定することはできませんが、実測34cmとしっかりとした深さと容量のあるタック入りフロントポケットに、折り畳み式のポールや傘がすっぽり入ります。
ポールの類は一気に山感が出るので、視認性のないDCHのポケットに収まった方がすっきり見える。歩き旅をする際、私はローカルな喫茶店や大衆食堂へ欠かさず入るので、仰々しい大荷物で小さな店内へ入るのは気が引けますし…。
それでは引き続き、六十里越街道の様子をお伝えしていきます。
駅前の商店街から住宅地、農地、山地と自分の知らない市井のグラデーションを歩きの速度で感じるが好きなので、私は可能な限り駅から山まで繋いで歩くことが多いです。鶴岡市街地から山地に至るまでの道中は、収穫間際の稲穂が揺れる長閑な田園風景の中、月山を望みながら進んだ。
車道からトレイルに入る箇所や道中には、道標と旗が数多く設置されよく整備されています。私がこれまでに歩いてきた熊野古道や四国遍路同様、車道と山道を交互に歩いて行くもののそこまで迷わないかと。
かつては木彫りの仏像が数多く並んでいたことから名の付いた十王峠。月山の好展望地。
Daybreakには収納式のウエストベルトが付いています。この容量のザックなら、手足を使って岩場や鎖場を昇降する場合やラン以外で必要性は然程感じないし、タウンユースなら尚更でしょう。さらに軽量化を図れるように取り外し式だと尚良かったと思います。とは言え、気持ちいいトレイルで走りたくなったり、ウエストベルトにポーチを取り付ける際は、クッション性のある幅広なベルトは安定性が高く重宝します。当店でも取り扱いのある、山と道ZIP POCKETやHMGのVERSAシリーズを取り付けることが可能なので、容量の拡張にも繋がります。
因みに私が使用しているのは【VICE VERSA】容量1.3Lと程よいサイズ感で、コンデジとスマホとポケットティッシュを入れても余裕がありました。
スマホをモバイルバッテリーで充電しながら歩く時などは、ウエストベルトにポーチを付けて歩きました。そうでない時はベルトを収納すればシンプルな見た目になるので、Daybreakのスタイリッシュさが際立ちます。
眺めの良い畦道や峠越えや沢沿いの道…ロケーションに富んだ古道歩きは、登山とはまた違った楽しさがありますよ。
”月山山麓湧水群”として名水百選に選出される程に水の豊かな地域。道中は水場が多く補給しやすいので、水を沢山背負わず軽快に歩けました。そんな、良質で豊富な湧水と山麓の傾斜を利用した”大網の棚田”は”やまがたの棚田20選”の一つ。
棚田から少し歩くと”湯殿山総本寺大日坊”へ辿り着きます。かつて湯殿山が女人禁制だった時代に、女性の為の湯殿山礼拝所としての役割を果たしていたそうです。
大日坊には即身仏が安置されているので拝んでいくことに。拝観料を支払うとお堂でご祈祷を受けることができます。旅の安全を祈り気を引き締めて再び歩きだしました。
そこから峠を一つ越えると、眼下には湯殿詣の宿場町として発展した田麦俣の集落が見渡せます。兜造りの多層民家は昔話の世界の様で、古道歩きの旅情がかきたてられますね。
田麦俣を越えるとゴールの肘折温泉まで集落はなく、ここからはトレイルがメイン。石碑から感じられる古道の名残と美しいブナの森は、いつまでも歩き続けたくなる心地良さがあります。植生からしてもやはり西日本の古道とは雰囲気が大きく異なりました。
何かと熊野古道を比較対象に挙げていますが、湯殿山、月山を始めとする出羽三山では月読命を、伊勢神宮では天照大御神を祀っています。東と西で陰と陽が対になり、”西のお伊勢参り、東の奥参り”(出羽三山)は古来より一生に一度は成し遂げたい人々の願いだったようです。
そんな私は、今年のお正月に伊勢神宮から熊野速玉大社まで、熊野古道伊勢路の200kmをタープ泊でスルーハイクして参りました。2023年も残り3ヶ月となりましたが、振り返った時に良い年だったと着地できたら巡礼のご利益かもしれませんね。話が逸れてしまいましたが、1日目はSEA TO SUMMITのナノタープポンチョを張って眠りました。145cm×265cmと、一般的なシングルタープと度程度の大きさで実測190gと軽量。他のブランドのタープポンチョと比べても軽くて大きく、ガイラインを結ぶためのループが頑丈に縫われているので積極的に幕として利用できます。
雨具兼シェルターは一見ストイックに見えますが、場所や状況を見極めて選択と工夫をすれば快適な上、軽量化に大きく貢献します。
今回は2泊3日の行程ですが、フロアレスシェルターやツェルトを用いたUL装備で1泊程度の山行でしたら、Daybreakでのオーバーナイトは十分可能だと感じました。
…2日目以降は、日本百名山でもある月山に湯殿から登り、肘折温泉を目指して歩きます。道中では突発的な大雨に打たれたり藪を漕いだり・・・Daybreakを3日間背負い続けた総括は、また〈後編〉に記していきます。