こんにちは、BAMBOO SHOOTSスタッフの坂本です。
今回はHyperlite Mountain Gearの最新モデル『AERO28』のご紹介です。
同社初のベスト型ハーネスを採用したトレイルランニング型ザックで、長期的にテストを重ねて開発された待望のモデル。HMGのザックはそれぞれに特色があり、AERO28は最もスピードに特化した上でしっかり泊まりの装備を積むことができる、1~2泊のファストハイクと相性が良い製品となっています。早速2泊3日のトレイルで使用してきたので、レビューをしていきたいと思います。
Hyperlite Mountain Gear 『AERO28』¥61,600(税込)
先ずは基本的なスペックから見ていきましょう。
<容量>メイン28L+外部ポケット8.5L(合計36.5L)
<重量>Mサイズ510g、Sサイズ490g
<耐荷重>11kg
<寸法>高さ:Mサイズ73cm/Sサイズ70cm、上部幅:Mサイズ45cm/Sサイズ44cm、底部幅:Mサイズ24cm/Sサイズ24cm ※サンプル採寸の為誤差あり
<素材>DCH50(メイン)、DCH150(ボトム)、100D Dyneema Ripstop(サイドポケット、ショルダーハーネス)、Dyneema Stretch Mesh UL(フロントポケット、ショルダーポケット)
<収納>フロントポケット、ボトムポケット、サイドポケット×2、ショルダーポケット×2、ショルダーボトルポケット×2、ショルダーシッパーポケット(左側のみ)アックス用ループ、ポール用ループ、内部に吊り下げ用ハイドレーションループ。
トレランライクな見た目をしつつ上記から見て取れる様に、全体容量36.5L、耐荷重11kgと、十分泊まりの山行をこなせるスペック。一般的なトレランザックは5~10Lが多く、大きいものでも15~20Lです。それらを鑑みるとAERO28は「より速いペースで行動しながら、ギア、水分、カロリーの補給が快適にできる、完璧なフィット感のベスト型ハーネス。アクセシビリティを優先する数日間の冒険者の為に設計されています。」とHMGが掲げるコンセプト通り一般的なトレランザックとは方向性が違い、あくまでファストハイクやFKTスタイルの延長線上にあると考えられます。同社の立ち位置は『CONTOUR 35』に近く、より小型化しブレを抑え、ベスト型ハーネスでフィット感の向上と補給のしやすさを計り、よりスピーディに山を歩ける仕様です。
AERO28が最も刺さる層は、標準コースタイムの0.5~0.7掛けで歩き(走り)、通常2泊3日や3泊4日のルートをより少ない日数でチャレンジしたい方向けかと思いますが。36.5Lという容量はULなテント泊にちょうど良く、単純にポケットが豊富で使いやすいULザックをお探しの方にもオススメできます。どうしてもシンプルで収納が少なくなりがちなULザックは、結局サコッシュやファニーパックにスマホや行動食を収めなくてはならないですから。実際にポケットへ収納してみると、1Lボトル、ゼリー飲料、エナジーバー、iPhone、AirPodsがすっぽり入ります。脱落を確実に防げるジッパーポケットがあると、鍵やお財布など貴重品を入れても安心感がありますよね◎
今回は一例としてボトルを入れていますが、ショルダーハーネスに芯材が無く、3Dメッシュの僅かなクッション性のみなので、硬いボトルを入れると当たりが少し気になる。水分を運ぶ場合はソフトボトルが適しているでしょう。今回のトレイルにおいてはサングラスを収納するのに重宝しました。
サイドポケットは最大30cmの深さがあって長物の収納に適し、フック付きコードロックでポールの固定→解放がスムーズに行えます。また、開口部のコードと2本のテープの計3カ所でコンプレッションが効いて、テントを入れてもしっかり押さえてくれました。
収納が多く、長物の固定がしやすく、防水性の高いAERO28、個人的には渓流釣りで使いたい…。スリムで竿を振るのに干渉しないし、ボトムポケットにネットが入り、野営釣行に使えるサイズ感。私は小学生から釣りをしていますが、フィッシングベスト代わりにトレランザックをよく使います。来春以降の渓流シーズンに使ってみたら追記しますね。
今回歩いたのは図中(※スーパー地形より引用)の黄色い線、司馬遼太郎の「街道をゆく」シリーズでも知られる古座街道。かつて、熊野古道大辺路は海辺での事故が多く、海が荒れている時の迂回路や西国巡礼路として使われていた様です。そして北を通る中辺路を”熊野上道”、南に並行する大辺路を”熊野下道”、古座街道を”熊野中道”と呼んでいました。そんな古座から田辺までおよそ90kmのトレイルを、同行者とゆるく走ったり歩いたりしながら2泊3日で行ってきました。
AERO28で2泊3日歩く装備はこんな感じ。今回はビビィ泊スタイルで、途中に補給できる商店などがないので3日分の食料を積んで行きます。カメラと水を入れて8kg程、これくらいの重量でしたら着る感覚のベスト型ハーネスで快適に背負えますが、やはり芯材が無くクッション性に乏しいので、耐荷重の11kg以下に抑えた方が良さそうです。
古座川河口付近に広がる古座の街並み、木材の搬出と古式捕鯨で栄えたこの街は街道筋らしいノスタルジックな雰囲気を残している。
紀伊半島には無社殿神社が多いことも特色の一つ。無社殿神社とは文字通り社殿の無い神社で、木や岩や島などの自然物を崇拝の対象とする最も原始的な信仰の形。明治の神社合祀の政策によって全国の無社殿神社が消えてしまいましたが、この熊野の地には数多く残っています。熊野古道の関連遺産として世界遺産に登録されている花窟神社が一番有名でしょうか。花窟神社は日本書紀でカグツチを産んで命を落としたイザナミが葬られたとされる地です。日本の神話とも関係性が深く、自然崇拝、神仏習合、修験道…様々な信仰が複雑に交叉し生まれた熊野の文化。その文化と自然の奥深さにすっかり魅了されて私はずっとこの地を歩き続けています。
走って汗をかいても温泉で流せるのがこのトレイルの魅力の一つ、美女湯温泉はアルカリ性単純泉のさっぱりした泉質でした。
紀伊半島の道はどこも美しい石畳が残っていて、古くは鎌倉時代のものもあります。集落との境には立派なシシ垣が築かれ、台風の直撃が多い南紀伊の那智勝浦、串本、古座、すさみには防風を目的とした重厚な石垣をよく見かけます。
紀伊の古道を歩くと、この地の環境に対応するため培われてきた土木を様々な形で目にすることができる。
山道に入るとイノシシに掘り返されてやや荒れている印象。シンボリックな夫婦杉と石仏が鎮座する法師峠が休憩にちょうど良く、ショルダーポケットに忍ばせていた『POWBAR』でカロリー補給。POWBARは北海道ニセコ町発のナチュラルエナジーバーブランドで、BAMBOO SHOOTSでは今シーズンよりお取り扱いスタート。全4種類の味を展開する中で、私は「ゴマ&デーツ」がお気に入り。1本で満足感を得られてとっても美味しいですよ。
2~3日目は天気がコロコロ変わる不安定な空模様で、面倒な雨具の脱ぎ着を繰り返した。そんな時、ポンチョをボトムポケットに突っ込んでおけばザックを下ろす事なく脱ぎ着ができます。また、ポンチョを着た状態からザックを下ろしてものを取り出す動作が非常に厄介なのですが、ここもやはりショルダーに複数のポケットが付いてるおかげで、ポンチョを着ている状態で必要なものを取り出すことができます。
こういった小さな煩わしさから解放されるだけで、ノンストレスでノンストップに歩き続けられる。ボトムポケットは左側にも指2本分程の小さな開口部があり、行動食として食べたスナックの空袋などを突っ込んでおくことができます。
2日目の夜、私はOR
『Helium Bivy』同行者はタープを張って就寝。Bivy程のシェルターならサイドポケット、フロントポケット共に余裕を持って収納できます。フロントポケットはCONTOURより少し小さい深さ29cm
最終日は町でゆっくりしたかったので、ヘッデンを点けて早朝スタート。白いザックは暗い中目立つのが良いですよね。熊野古道では特に大辺路と紀伊路で歩道の無い車道を歩く区間が多く、暗い時こちらに気付かない車がいてヒヤヒヤした経験があります、そういった意味でもザックの視認性って意外と重要です。
白いDCHの汚れが気になる方は、九州山地の祖母山を縦走した
前回のブログにて汚れの落ち具合を検証しているので是非ご一読ください。
本来の古座街道は上富田町の朝来駅が起点となっていますが、田辺市の闘鶏神社まで歩いて今回のゴールとしました。最後は田辺の銭湯で汗を流して、味光路のスナックで慰労会。ここまでが、私が紀伊半島を歩く際のルーティン。
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今回AERO28を背負いトレイルを90㎞歩き、最も印象的だったのはフィット感の良さ。HMGはかっちりとした背負い心地のザックが多い中、AERO28はベスト型ハーネスで上半身全体を柔らかく包み込むように背負うことができます。これは勿論ブレの少なさに直結しますし、立体的に荷重がかかることで肩の疲労感の軽減にもつながります。
マイナスに感じた点は、前述の通りハーネスにクッション材が入っていないこと。ただ、今回背負った8kg程度なら肩に食い込む感覚はなかったですし、一般的にトレランザックのベスト型ハーネスはクッションが入ってないものが多いので、ハーネスが固くなるなるとフィット感の低下など、弊害が生まれるのかもしれません…
もう一点、HMGのザックは殆どのモデルでしっかりシーム処理がされている中、AERO28は生地同士の縫い目にシーム処理がありません。DCH自体の防水性が高くても、強い雨だと縫い目から浸水するので、ここは少し残念。やはり絶対に濡らしたくないものの類は、同社のアクセサリーで防水を完璧にするのが良いでしょう。私は
『ROLL-TOP STUFF SACKS』10Lにシュラフと着替えを纏めて入れ、モバイルバッテリーはDCFで自作したポーチに入れていきました。今回、AERO28と同時に発売となった
『ZIPPY』もオススメです。
そして、なんと言ってもベスト型ハーネスのポケットの多さはハイカーにとっても有用で、色んなものを入れてみたくなる楽しさがあります。GPS機器、コンデジ、アクションカムなんか入れるのにも使いやすいのではないでしょうか。今回のアイテムではPARAPACK『6P』が一番ピッタリでした。
トレラン、日帰りハイク、テン泊登山、バイク、釣り…当店では幅広いアクティビティ用途でAERO28を積極的に提案していきます。是非、皆さんもいち早くHyperlite Mountain Gearの最新バックパックを体感してみてください。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
坂本
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