【みちのく潮風トレイル】三陸鉄道でゆくセクションハイク
こんにちは、BAMBOO SHOOTSスタッフの坂本です。
今回は、みちのく潮風トレイル(以下MCT)を2泊3日で70km程歩いてきました。
装備は前回のレビュー記事同様、Hyperlite Mountain Gear「Daybreak」でのテント泊。MCTでは、砂礫海岸等ペグの効かない場所での野営も想定されるので、今回はビビィを追加。
私はこれ迄も何度かMCTを歩いているので、その続きを歩きます。今回は久慈市の駅前からスタート。
※これまで歩いてきたGPSログ
途中、"海のアルプス"と呼ばれる北山崎から摂待までは以前歩いているので、その区間は三陸鉄道に乗ってワープ。摂待駅で下車して未踏のコースを辿り南へ進む行程です。
JRや私鉄が並行しているこのトレイルは、セクションハイクしやすいのが特徴。もっともMCTはスルーハイクだと最低1ヶ月は必要ですし、セクションで歩く方が殆どでしょう。
…そもそも、みちのく潮風トレイルとは?
東日本大震災からの復興を目指し、環境省が中心に整備した、青森県八戸市から福島県相馬市を繋ぐ全長1000kmのロングトレイル。
半分以上は舗装路ですが、3~4割は海岸線の遊歩道や山道を歩きます。海から山まで東北太平洋側の自然をダイレクトに味わえる素晴らしいトレイルで、私は年に2回程のペースで歩きに訪れています。
今回は、ファニーパックにLeicaのコンパクトフィルムカメラを忍ばせて行きました。歩きつつの撮影が多いので、やや手ブレ気味の写真がありますがご容赦ください。
〈1日目〉
久慈市内で泊まっていた宿を出発し、トレイルに合流すべく海を目指す。10月の岩手ともなれば朝の空気はピシッと冷たく、気温よりも海水温の方が高い為に気嵐が出ていました。
前述した通り半分以上は舗装路を歩きますが、秋晴れの海沿いは爽やかで足取りは軽い。
今回のセクションは、3日間とも1日1回以上は商店やローカルスーパーで補給が可能なこともあり、その日の食料だけを調達して背負い歩くスタイル。
生活圏からかけ離れた海外のロングトレイルと違い、日本の長距離歩道は人の生活圏と自然歩道の連続なので、補給ポイントを上手く計画すれば小型のザックでも十分歩けます。
”北限の海女の地”である久慈は、某国民的ドラマのロケ地であり、記念碑や案内板を至る所で目にします。
港から高台の集落へと繋がる海女の古道の途中には展望ポイントがあり、久慈湾が一望できます。宿から歩きっぱなしだったので、ここで一度コーヒー休憩。先に言うと、ここから先のエリアはMCTの中でも屈指の難路とされており、マップを見ても「ここ以南難路、判断は自己責任で」の文字と共に「クマ注意」「渡渉注意」「道迷い注意」「滑落注意」…と、注意書きが羅列され少々緊張感が走ります。
海女センターのある小袖海岸と高台の集落を越えた先から久喜浜に至るまで、コースタイム5時間半の山道を歩くのですが、エスケープルートや東屋等の休憩ポイントはありません。
この一帯は国有林のようですが、入会権の設けられた松茸の森。当然有権者以外は採取禁止、実際に赤松の多い美しい森でした。
登山道上にはアミタケやヌメリイグチがよく発生していて、森の奥からラジオの音が聞こえていました。地元の方がきのこ狩りをしていたのだと思われます。
長い山道を歩き終えて海辺に降り立つ時は清々しく、MCTの中でもお気に入りの瞬間の一つ。
小袖海岸以南のトレイルは確かに歩き難かったり渡渉も多いですが、雨後でなければ一歩で越えらるような沢が殆ど。登山をしている方なら特に問題の無い道に感じました。
ただし、このルート序盤で藪の中を逃げていく熊の姿を確認したので、ソロで行かれる方は特に熊鈴の携行や定期的に笛を吹いて音を出す等、対策をする必要があります。
山道を終えて久喜浜を歩けば市街地へと入る。陸中野田駅周辺は商店やスーパーがあるし、駅には道の駅が併設されています。三陸鉄道はこのような駅が多く、補給や休憩で何度か立ち寄りました。海の幸も山の幸も豊富で美味しいこの地では、リーズナブルに海産物や松茸を購入できるので、トレイル中に松茸を衝動買いをして自宅に送りました。
歩きながらこういった楽しみ方もできるのがMCTの魅力ですね。
この日はMCTのルート上にある玉川野営場に泊まりました。
トイレ、水道、自炊場完備の綺麗に整備されたキャンプ場です。基本無料ですが、管理人の方の巡回時に清掃協力金として200円支払います。
この日は貸切状態で、波の音と時折走る電車の音だけを聞きながら眠りに就きました。
玉川野営場からトレイルを降ればすぐに海岸に出るので、朝起きて太平洋から昇る日の出を拝むことができる。山でも海でもついつい立ち止まってしまう瞬間。
2日目は普代駅まで歩いて電車に乗り、以前歩いた区間を飛ばして摂待駅までワープする行程です。
日の出と同時に起床して歩き出したので、気温が上がってきたタイミングで海辺の公園にて朝食の時間とします。食事を摂り、音楽を聴きながら20分くらいベンチでまったりしていたらシュラフとビビィの結露は完全に乾いた。黒色で透湿素材の幕は、引っ掛けておけば中まですぐに乾いてくれてありがたい。
寝る時にしっとりしているのは不快だし、長時間濡れたままだと生乾き臭がしてくるので、休憩とセットで幕を乾かす時間は極力確保するようにしています。お遍路を40日間歩いた経験以降、私の中では外せないルーティン。
山道へ入ると、ブナやコナラの明るい森。緯度の高い三陸は、標高の低い沿岸部もブナ林が広がる為、新緑や紅葉の時期は特に美しいです。私自身、新緑の北山崎を歩いた時に魅了され、セクションで定期的に歩くようになりました。
白井海岸から普代駅にかけての山道の下山路。ここがとりわけ厄介で、沢沿いというより沢の中を歩いていきます。水と泥でベチャベチャになりながら街へと降りました・・・
普代の商店街は津波の被害を受けなかったこともあり、老舗の和菓子屋さんや商店が多く残っています。食料を補給し、昔ながらの大衆食堂でラーメンを食べてから三陸鉄道に乗り込みました。
摂待駅で下車し2時間程歩くと、気付けば日没1時間前。私は長距離歩く際、目的の野営場や山小屋や民宿でも無い限り、日没ギリギリまで歩いて常識と条例の範囲内で野宿をすることが多い。
この日は野営ポイントの目星を付けていなかったのもあり、途中で話しかけてくれた地元のお父さんに聞いてみました。最近はMCTのハイカーが多いそうで、危険箇所や、熊の出るポイントや、野営適地を丁寧に教えてくれた上、「夜食に食べな」とサンドイッチまで頂きました。
ありがたい出会に感謝し、教えてもらった海岸を目指し歩く。タイミング的にもベストで、ヘッドライトを点けずに歩けるギリギリの時間内に到着。
グランドはペグの効かない砂礫地で、ビビィの判断は正解でした。暗くなっても3分あれば設営できてサッと潜り込めるので、私のような行き倒れスタイルには適しています。Outdoor Researchの「Helium Bivy」はペグなしでも顔まわりのクリアランスがしっかり保たれ、メッシュ付きでどこでも快適に寝れる。ガイラインで吊り上げないと空間の保てない最軽量クラスのビビィは、結局張る場所を選びます。
頂いたサンドイッチを食べてサッとビビィに潜り込んで寝ました。
〈3日目〉
この日の朝もよく晴れていて、日の出と共に目覚める。海岸では日の出前から昆布拾いをしているお母さん方がいて挨拶を交わします。
海に潜らない海女さん以外にとって、浜に打ち上げられる昆布は収入源の一つだそうで。道の駅では出汁を取る用に松茸と一緒に昆布も購入しました。
すぐ近くで寝ていた私のことは、明るくなっても全く気付かなかったみたいです。ビビィのステルス性たるや・・・
海岸沿いの道は津波によって廃道と化していました。
真崎海岸周辺も海から山へ、気持ちの良い道の連続。最終日は帰りの電車の関係上、田老をゴールとして目指します。
このエリアは、海岸段丘によって生活圏と隔絶された電波の入らないような場所にある漁港でさえ自販機が設置されていることが多い。まさにジャパニーズトレイルエンジェル。
三王岩から磯に降りて遊歩道を歩けば田老の街はすぐそこ。
下から見上げる三王岩は迫力があり、この街を代表する景勝地です。
田老で一際目立つのは、震災遺構の「たろう観光ホテル」津波の恐ろしさを忘れさせない痛々しい姿で保存されており、予約制で中の見学もできるそうです。
今回のゴール新田老駅に到着し、可愛らしいデザインのワンマン列車に乗り込んだ。寂しさはない。また来るので。
電車で盛岡へ向かうも、宮古駅で乗り換え時間があるので銭湯で汗を流します。宮古は三陸の港町ながら3軒の銭湯が残る街。福島湯は中でも私のお気に入りで、浴室の鳳凰のモザイクタイルが見事。次は歩きで来るのが楽しみな街です。
70km歩いた体を入念にほぐし。リフレッシュして今度はJRへ乗り込み、三陸の地を後にしました・・・
今回のみちのくの旅はこれにておしまい。
〈あとがき〉
今回は、みちのく潮風トレイルの久慈駅〜普代駅間、摂待駅〜新田老駅間の合計70kmを2泊3日で歩いてきました。
既に歩いている途中の区間は三陸鉄道に乗って飛ばしましたが、歩いた区間を車窓から眺めながら起点まで移動するのは”前回のおさらい感”があり。地元ではないのに懐かしくなる、愉しい電車旅も満喫できました。
冒頭でも触れた通り、MCTは鉄道と並行している区間が殆どでセクションハイクしやすいのが特徴です。歩き終えて帰る瞬間は、終わってしまう寂しさよりも「続きはいつ歩こう?」「今度は違う季節もいいな」といった、ワクワクの方が強くて。今までスルーハイクが多かった私にとっては新しい感覚でした。
歩くセクションによっては、積雪は少なく通年で歩けて、お手軽ハイキングなのに絶景を楽しめる場所が多々あります。
これから春先まで、山は雪に閉ざされる季節。登山とは違った海辺のハイキングはいかがでしょうか?
当店のお客様でも「連休でMCTを歩きます!」といった話を度々耳にするようになりました。ウェアリングの提案や歩くセクションの相談などもお気軽に店頭でお尋ねください。
ここまでご覧いただきありがとうございました。 坂本
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